ゴモラの擬人化は何人&何種類いるのか――ウルトラ怪獣擬人化計画と+α
はじめに
ウルトラ怪獣擬人化計画。そろそろ漫画版2作品の新刊も発売され、11月にはアニメ版の劇場版である「怪獣娘(黒)」も公開されるなど、かなりの盛り上がりをみせている。
かくいう筆者も企画開始当初からしっかり追っており、かつてファンの間でも異端扱いされた頃を想いながら、ガイさんがアニメ見てワイワイしたりジャグラーさんがアニメ版に出演したり、擬人化企画が元でザンドリアスが新造されジードに出演するなど、いつの間にか半分メインストリームに躍り出た現状を、思えば遠くへ来たもんだ、的な温かい目で見守ったりしている。
ところで筆者は実はレイオニクスなのでゴモラが好きであり、もちろん擬人化ゴモラも愛しており怪獣酒場で買ってきた「怪獣珍味ゴモラの皮」を眺めながら「実質スク水の千切りじゃん」とのたまったりS.H.Figuartsゴモラの尻尾を切断して(そういうパーツがある)「前シッポ切断!!!」などとふざけたりしているのだが*1それは置いておいて、色々な媒体を眺めるに思うのが、次の疑問である。
ゴモラちゃんって何人いるんだろう……?
例えば現在一番人口に膾炙しているだろうアニメ版のゴモラ(黒田ミカヅキ)は関西弁まじりだが、爆天童先生の漫画版では常に標準語を話し、別人格であることが知られている。それ以外にも、feat.POP版などいくつかのバリエーションが既に存在しているのだ。原作ゴモラの多種多様さには及ばないものの、擬人化のほうもかなりヤバい。とりあえずここで一度まとめ、これからも広がり続けるだろう擬人化計画ワールドに備えよう、というのがこの記事の趣旨である。
とにかく最後まで読んで欲しい。
続きを読むウルトラマングレート(アメコミ版)を入手したので紹介するぞ
ウルトラマンG(グレート)をご存知でしょうか。
そう、1990年に円谷プロダクションがオーストラリアで製作したウルトラマンですね。
大平野の国らしい大らかな作風もさることながら、人材などの面でその後の平成ウルトラへつながる重要な作品でもあります。
(アフィじゃないです)
一応あらすじを確認すると、
UMA所属のジャック=シンドーは火星で邪悪生命体ゴーデスとウルトラマンの闘いに遭遇。ジャックはウルトラマンと一体化し、地球でゴーデス細胞や環境破壊が目覚めさせた怪獣たちとの戦いに身を投じてゆく……
といった感じでしょうか。
で、このウルトラマングレートにはいくつか漫画版があります。
一つは結構知られており、最近新装版が出た島本和彦版のもの。それ以外にも講談社『月刊ヒーローマガジン』に読切で掲載された森藤よしひろ版があります。
(アフィじゃないです)
ところが。
実は、ウルトラマングレートには以上に加え、国外で発行された漫画版――アメコミが2作品存在するらしいのです。そりゃ海外ウルトラマンだしそのぐらいあるよなという感じですが、意外にも情報がない。なんだこれは。
というわけでアメコミ版グレート入手してしまったのでその内容を紹介する記事です。
こういう本を作ったので一応その宣伝もかねて、その原稿を抜粋改変する形で進めていきます。
続きを読む【C94告知】『平成ウルトラ未刊コミカライズ図鑑』作りました
C94の新刊なんとか入稿しました。というわけで宣伝記事です。
今回は『平成ウルトラ未刊コミカライズ図鑑』を発行します。どういう本かというと、文字通り「平成ウルトラのまだ書籍化されていないコミカライズ」をまとめた本になります。平成最後の夏😄😄😄なので。
なんですかこれ?
新作ウルトラマンが始まると、コミカライズも始まる。
20世紀後半に広がったメディアミックス展開の流れ。そうした風潮のもと、平成ウルトラでも数多くのコミカライズが生み出されてきました。しかし、そうした中には『てれびくん』『テレビマガジン』など雑誌に掲載されたきり、単行本などの形で書籍化されていないものも多数存在します。
書籍化された例としては、島本和彦『ウルトラマンG』や椎名高志『ウルトラマンネクサス』が記憶に新しいかと思います。しかし多くは作者が著名であったり、作者の熱意によるものだったりとそれなりの理由があるもので、特に単発で掲載されたものなどは版権の関係もあるのか再掲載も難しく、ほとんど忘れ去られたような作品も……。
というわけで、そうした作品を児童誌やテレビ雑誌から発掘、概要やストーリー・詳細な掲載情報などをまとめて紹介するのがこの本です。
2019.8.6追記:C96にて増補・再販します。詳しくはこちら。
2022.12.25追記:C101にて大改訂し再版します。詳しくは以下の記事にて。
続きを読む解題・ 『太平風土記』――性格・作成者・その伝来について
はじめに
ウルトラマンオーブでキーアイテムとなった古文書『太平風土記』。筆者はこれまで、ウルトラマンオーブ本編に登場した『太平風土記』および諸作品の関連史料を翻刻し、解説を加えてきた。その成果を踏まえ、『太平風土記』の解題としてまず基本的な性格を整理し、その上で誰によっていつ成立し、かつそれがどのように現代まで伝えられてきたのかを考察したい。
※本記事は、単体でも問題ありませんが、『太平風土記』翻刻・解説シリーズ(1)~(6)を参照しておくとより理解が深まると思います。
全体の目次はこちら fukurami.hatenablog.com
(2020.08.09追記)『太平風土記』翻刻・解説シリーズを改稿して再度同人誌としてまとめました。現在BOOTHにて通販中です。詳しくはこちら。
(2020.10.10追記)「ウルトラマンZ」18話に新たな『太平風土記』が登場したことを記念して、本解題を上記同人誌版に準拠して改稿しました。「滅幌主」編は現在執筆中。
(2023.08.10追記)「ウルトラマンブレーザー」5話に『太平風土記』は登場しませんでしたが、「滅幌主」編を加筆した同人誌を改訂します。C102もしくはBOOTHにて。
続きを読む『太平風土記』翻刻・解読 (5) 鎌鼬呑
ウルトラマンオーブに登場した古文書『太平風土記』を翻刻して解説する記事です。今回は23話に登場しかけた鎌鼬呑(かまいたどん)について。
目次はこちら fukurami.hatenablog.com
【鎌鼬呑(かまいたどん)】
登場:ウルトラマンオーブ第23話「闇の刃」
原文(一部)
出典:オーブn話本編映像より。
釈文
[忽ちに風強く
吹き荒れけりと
思ふないなや
甚だ大きなる
鎌にて
切り裂きし
ことく
牛馬も家屋も
真二つに
なりにけり]
その魔物
鎌鼬呑
禍々しき
風にて
ありとあらゆるものを
切り裂きにけり
誰やらん鼬の姿せし
[巨大]なる死神
[現れけりと言ひた]り
【けれど、我にはその姿みえざりき】
※ []部は劇中で欠損していた場所や映らなかった箇所を『完全超全集』所載の画像にて補った部分。
※ 【】部は劇中および『完全超全集』の画像では一切確認できないが、『完全超全集』の「現代語訳」に記されていた部分。
現代語訳
急に風が強く吹き荒れたと思うやいなや、とても大きい鎌で切り裂いたように、牛馬も家屋も真っ二つになった。
その魔物、鎌鼬呑は禍々しい風でありとあらゆるものを切り裂いた。
誰だったか、鼬の姿をした巨大な死神が現れた、と言った。
【が、自分にはその姿は見えなかった。】
『太平風土記』翻刻・解読 (4) 戀鬼(紅蓮騎)
ウルトラマンオーブに登場した古文書『太平風土記』を翻刻して解説する記事です。今回は19話の戀鬼(紅蓮騎)について。
目次はこちら fukurami.hatenablog.com
【戀鬼(紅蓮騎)】
登場:ウルトラマンオーブ19話「私の中の鬼」
本文
〈1〉
〈2〉
出典:本編映像を加工して作成
翻刻
〈1〉
戦国の世にあひ愛でつゝも
引き裂かれし
ものゝふと姫ありけり
戀鬼はその怨霊にて
幸なる恋人をそねみ
真赤に燃ゆる甲冑に身をつゝみて
折々の婚礼に現れては
その花嫁を傷つけにけり
〈2〉
あらたかなる法師
その怨霊鬼を
石に鎮めける
爾来鬼はおのが
身の霊力を
人ひとの願ひ叶へる為に
使ひけると[なむ]*1
現代語訳
戦国の世に、互いに愛していたが引き裂かれた武士と姫があったという。
戀鬼はその怨霊で、幸せな恋人を妬み、真っ赤に燃える甲冑に身を包んで、時々の婚礼に現れてはその花嫁を傷つけたという。
あらたかなる法師が、その怨霊鬼を石に鎮めたという。
以来、鬼は自らの霊力を、人々の願いを叶えるために使ったという。
語句
- あひ 【相】 〔アイ〕〔接頭語〕❶(動詞の上に付けて)双方が同じ動作をする意を表す。互いに。一緒に。(小学館 全文全訳古語辞典)
- 愛でる〔他ダ下一〕め・づ〔他ダ下二〕(1)心がひかれ、いとしく思ったりかわいく思ったりする。愛賞する。愛する。(日本国語大辞典)
- そねむ 【嫉・妬・猜・嫌】 〔他マ五(四)〕自分よりすぐれているもの運のよいものをうらやみねたむ。嫉妬する。そねぶ。(日本国語大辞典)
- こいびと[こひ‥] 【恋人】〔名〕その人が恋しく思っている相手。現代では特に、お互いに恋しく思い合っている場合の相手をいう。恋愛の相手。愛人。情人。おもいびと。(日本国語大辞典)
- なむ ここでは、強意の係助詞であろう。「……となむいふ」の「いふ」が略された形。
解説
オーブ19話に登場した戀鬼(紅蓮騎)の来歴を物語るものとなっている。戦国の世、互いに愛していた武士(劇中では「武将」と呼んでいた)と姫が引き裂かれ、その怨霊が戀鬼なのだという。劇中でナオミの嫉妬に反応して友人の結婚式を襲ったように、幸せな恋人*2を妬んで婚礼を襲ったとある。その後法師に石の中へ封印されたというが、それが本編にも登場した「想い石」として有名になった石であった。その表面には「戀鬼在此」と刻まれており、シンが戀鬼の正体に迫る手がかりとなった。
この戀鬼はオーブが初出ではなく、コスモス18話「二人山伝説」に登場したものの同類ということになっている。そちらでは、戦国時代に対立する国の武将と姫が禁断の恋をしてしまい、やむなく自害。その怨霊は2つの国を滅ぼしたが、錦田景竜*3という侍によって封印されたという。封印の石は香野村に刀石として伝来したが、ダム工事によって爆破され、コスモスと戦うことになった。
オーブの方も概ねコスモス版に準拠しているが、恋人に嫉妬したり恋人を結びつけたりといった要素はコスモス版には存在しない。しかしながら、『太平風土記』の挿絵の男女はコスモスに登場した絵巻の男女を踏まえたものと思われ*4、内容の面でも女性(ナオミ、シノブ)の説得で戦意を失う点が共通している。良い再登場のさせ方だったと言えるのではないだろうか。
なお「紅蓮騎」の言葉の由来は、『完全超全集』の解説(p.36)によれば武士の異名であり、裸足で戦って騎馬を失ったことから、靴を供えると願いが叶うといういわれが生まれたという*5。劇中で想い石を紹介していた女性によれば供えられた靴を履いて相手のもとに赴くらしく、巨大化した戀鬼(紅蓮騎)はナオミのパンプスを履いている。
ちなみにこの『太平風土記』の戀鬼に関する頁は、『太平風土記』の来歴に関する重大な情報を含んでいる。まず、「戦国の世」と触れられている点。中国の戦国時代を差しているのでもなければ、いわゆる戦国時代を「戦国の世」と呼ぶのはその終結以後、すなわち織豊期より後と考えるのが自然である。また、この頁に限って、他の『太平風土記』とやや筆跡が異なっている。ここから、『太平風土記』が複数人により著された可能性、あるいは後からこの部分が書き加えられた可能性を指摘することができる。これ以上の詳しい考察は後に記す『太平風土記』解説編に譲るが、興味深い。
2020.08.09追記)『太平風土記』翻刻・解説シリーズを再度同人誌としてまとめました。現在BOOTHにて通販中です。詳しくはこちら。