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ふくらみ

膨張し続けている

オーブ『太平風土記』翻刻・解読 (1) マガバッサー・マガグランドキング

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ウルトラマンオーブに登場する古文書『太平風土記』を翻刻・解読しました。このページではマガバッサー・マガグランドキングについて扱っています。

8月にC90で発行した同人誌に掲載した「太平風土記の研究」の転載です。長いのと読者の便宜のため、複数編に分割し、順次公開していきます。目次はこちら。 fukurami.hatenablog.com

〈釈文の表記について〉
 改行などは原文ママ。句読点を適宜補った。字句を補う箇所は[ ]で示した。

【禍翼/マガバッサー】

登場:第1話「夕陽の風来坊」

原文

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出典:Something Search People 公式サイト(http://somethingsearchpeople.com/)より引用

釈文

稲妻を伴ひて疫流行らせし魔物
か風の力を統べて人々に災厄を
もたらしけり。暗雲を近めて空
を塞ぎ、けたゝましき悪魔の風
か吹き荒る。

そノ風稲穂をさなからに薙ぎ
倒し、大地は逆様に覆る。
巨大な怪鳥禍翼来たりて嵐呼
ひ、地上のすへてを滅ほさん。

語句

  • ……〔名〕流行病。悪性の伝染病。えやみ。えのやまい。(日本国語大辞典
  • 流行らす……はやら・す
    【流行】〔他サ五(四)〕はやらせる。広める。(日本国語大辞典*1
  • けたたまし……〔形シク〕(「けただましい」とも)突然のことで、他を非常に驚かすようなさまである。(1)人をびっくりさせるくらいにあわただしく、騒々しい。さわがしい。(日本国語大辞典
  • さなからに……さ‐ながら【一】〔副〕(2)すでに存する事物、事態が量的に不変であるさまを表わす。そのまま全部。全部そっくり。(日本国語大辞典

現代語訳

 稲妻を伴って疫病を流行らせた魔物が、風の力を操って人々に災厄をもたらした。暗雲を近めて空を塞ぎ、騒々しい悪魔の風が吹き荒れる。
その風は稲穂をそのまま薙ぎ倒し、大地は逆さまに転覆する。
巨大な怪鳥禍翼がやってきて嵐を呼び、地上の全てを滅ぼすだろう。

解説

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 劇中でマガバッサーが暗雲を呼び、ビルを竜巻で巻き上げ墜落させたような描写が『太平風土記』中にも見られる。しかし、劇中のマガバッサーは世界中に7つの台風を発生させ、全世界同時異常気象とも呼ばれる大規模な現象を起こしている。稲穂を薙ぎ倒し、というようなレベルではなく、マガバッサーの能力がこの時点より向上している、と考えられるが、どうなのだろうか。

 劇中でガイは「悪魔の風マガバッサー」と発言していたが、しかしこの文章を読む限り、前段の悪魔の風を起こす「魔物」と後段の「禍翼」が一致するようには思えない。前段は「もたらしけり」とあるように過去の伝聞を現している一方で、禍翼についえは「滅ぼさん」とあるように推量である。この文書の時点で魔物の災厄は既に起きているが、禍翼は出現が予測されるのみなのである。さらに、魔物の能力として記述されている疫病の流行を禍翼=マガバッサーは劇中で発揮していない。つまり、文章を読む限りでは前段はあくまで「魔物」について述べたものであるということが出来、「禍翼」の説明に加えるのはおそらく正確ではない。

 ただ、本編の本文書に関する描写を見る限り、禍翼=魔物=マガバッサーであると考えられ、以上のような解釈は成り立たないようである。考証の不足か脚本の都合か、やや不自然な文章と言え、なかなか残念である。

【禍土王/マガグランドキング】

登場:第2話「土塊の魔王」

原文

〈1〉 f:id:tfukumachi:20161021233929p:plain:w400

〈2〉 f:id:tfukumachi:20161021233955p:plain:w200

出典:第2話本編映像を加工して作成。

釈文

〈1〉

地なきて零れし時、
鋼の鎧を倶ひし
もののけ禍土王
現れたり。
あたかも山ヲ歩き
たることくにて
街も寺もみな
踏み潰し、巨大な
る魔物は破壊
の限りを尽くし
たりとそ。

〈2〉

いとからたも巨きし
うち出てたる
角持ちし赤き巨人か、
土を禍々しく乱せし
巨大な魔物を、龍脈を
以て地の底に封印せ[し]*2り。

語句

  • 零れる……こぼれる。
  • 倶ふ……そなふ。参考:ぐ‐・す 【具・倶】【二】〔他サ変〕(1)必要な物をそろえる。備える。ととのえる。(日本国語大辞典
  • いと……[副]1 非常に。たいへん。きわめて。(デジタル大辞泉
  • うち出る……出る、を強めた語。うち
    【打ち】[接頭]動詞に付いて、その動作・作用を強めたり、語調を整えたりする。(デジタル大辞泉
  • 龍脈……風水で、起伏しながら連なる山並みをいう。その中を地気が流れるという。(デジタル大辞泉

現代語訳

〈1〉

 大地が鳴動して崩れる時、鋼の鎧を備えたもののけ・禍土王が現れた。
 あたかも山を歩いているように、街も寺も皆踏み潰し、巨大な魔物は破壊の限りを尽くしたという。

〈2〉

 とても体が大きい、出現した角を持つ赤い巨人が、土を禍々しく乱した巨大な魔物を、龍脈を使って地の底に封印した。

解説

 禍土王=マガグランドキングについては破壊の限りを尽くしたというようなあまり具体性のない記述ばかりである。

 ところで、「禍土王」という文字について、松戸シンがSurfaceで示した分析では、禍=「MAGA」土=「GRAND」王=「KING」とある。しかしよく考えてみて欲しい。土は意味からすればGRANDではなくGROUNDの方が正しいのではないか。無論、グランドキングの方は明らかにGRANDなので、ある意味正しいのだが、世界観も全く違うこの世界で土=GRANDと充てるのは少しずれているように思える。

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 さて、ここで問題になるのは、後段に登場した「角を持つ赤い巨人」である。付された絵を見る限り、どう見てもウルトラダイナマイトを使うタロウさんである。勿論マガグランドキングを封じていたのはタロウさんの力なので正しいのだが、とするとこの文書を描いた人物がタロウを目撃していた=タロウが過去に地球に飛来していたということになり、ともすれば初代マンやメビウス、ゼロ、ジャックも既に地球に来ているということになる。いずれ解き明かされるだろう謎だが、一応ここで取り上げておきたい。龍の廻りに四軒の寺が描かれているが、これは劇中で龍脈の要となっていた四カ所のビルの位置に存在していたものだろう。

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目次はこちら。 fukurami.hatenablog.com

オーブ『太平風土記』翻刻・解読 (2) マガジャッパ・マガパンドン - ふくらみ

*1:最近の言葉ではなく、用例は17世紀から存在する。

*2:「し」という文字は無いが、松戸シンはこう発音していた