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ふくらみ

膨張し続けている

オーブ『太平風土記』翻刻・解読 (2) マガジャッパ・マガパンドン

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ウルトラマンオーブに登場する古文書『太平風土記』を翻刻・解読しました。このページではマガジャッパ・マガパンドンについて扱っています。

8月にC90で発行した同人誌に掲載した「太平風土記の研究」の転載です。長いのと読者の便宜のため、複数編に分割し、順次公開していきます。目次はこちら。 fukurami.hatenablog.com

【禍邪波/マガジャッパ】

登場:第3話「怪獣水域」

原文

〈1〉f:id:tfukumachi:20161129002134p:plain:w350

〈2〉f:id:tfukumachi:20161129002155p:plain:w192

〈3〉f:id:tfukumachi:20161129002238p:plain:w178

出典:Something Search People 公式サイト(http://somethingsearchpeople.com/)より引用

釈文

〈1〉

すさましき臭ひを
もて人ひとを惑は
せり。そのうたて
き臭ひ、海の悪しき
臭ひをあまた合は
せたるやうにて、
井戸からも悪し
き臭ひ漂ひ、たつき
に用ゆる水をみ
な腐らせにけり。

〈2〉

むくつけなる巨大
な魔物禍邪波
かあらわれ、水を
禍々しく乱す。
水に浸かることを
好み、川の水を穢す。

〈3〉

尖れる口より 鉄砲のことき水
を飛はし、うたて
き臭ひの黄色き
息を吐きいたうたり。

語句

  • すさまじき……すさまじ〔形シク〕(四段動詞「すさむ(荒)」の形容詞化したもの。古くは「すさまし」)(4)恐怖を感じさせるほどだ。恐ろしい。ものすごい。(日本国語大辞典
  • うたてし……〔形ク〕(1)いやだ。情けない。ひどい。困った。(4)気味が悪い。感じがよくない。異様だ。(日本国語大辞典
  • たつき……た‐ずき【方便・活計】〔名〕(3)生活の手段。生計。たつ。(日本国語大辞典
  • むくつけなり……むくつけ【二】〔形動〕(1)並はずれていておどろくほどのさま。不気味なさま。また、あくが強くなじめないさま。(日本国語大辞典

現代語訳

〈1〉

 ものすごい臭いを以って人々を惑わした。その酷い臭いは海の悪い臭いをたくさんあわせたようなもので、井戸からも悪い臭いが漂い、生活に利用する水をみな腐らせた。

〈2〉

 不気味で巨大な魔物・禍邪波が現れ、水を禍々しく乱す。水に浸かることを好み、川の水を穢す。

〈3〉

 尖った口から鉄砲のような水を飛ばし、酷い臭いの黄色い息を吐いた。

解説

f:id:tfukumachi:20161129002431p:plain:right 一読して分かる通り、実感を持ったかなり具体的な記述がある。文体も一貫して過去形を用いており、劇中で銭湯が使えなくなったように、生活用水がことごとく禍邪波に汚染され、使えなくなることが実際に発生したことが覗える。「海の悪い臭いをたくさん合わせた」というのがどのような臭いなのかは分からないが、言葉の節々でくどいくらいに「うたてし」を使っており、「すさまじ」「むくつけなり」と形容詞もことごとく舌鋒鋭くその酷さを表現している。挿絵の人々も皆一様に鼻を押さえており、臭さを物語っている。

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 禍邪波について文中では、水に浸かることを好み、鉄砲のように水を噴射、酷い臭いの黄色い息を吐くと表現されており、概ね劇中のマガジャッパの描写と一致している。総じて、記されていることは冗談ではないシリアスな事件だが、本編と同様に、なんとなくコミカルなものを感じさせる記述であった。

【禍波呑*1/マガパンドン

登場:第4話「真夏の空に火の用心」

【原文】

〈1〉f:id:tfukumachi:20161129002745p:plain:w400

〈2〉f:id:tfukumachi:20161129002758p:plain:w400

釈文

〈1〉

空に二つの日輪
のほりし時、地上の
ものみな焼き
尽くされん。
日輪凄ましき熱
暑を引き連れ
うち出ると、
川々沸きたち、
山々は焼け、やかて
家々の屋根より
も炎たち上れり。
やにわにうち出し
日輪に神々しさ
なく、その炎の
うちに怪しき
影して喜けり。

〈2〉

偽りの日輪之は
災ひの炎禍波呑なり。
その者地上に現は
るゝ時、おとろおとろ
しき音響きける
とそ。空より火
の玉降りる[と]*2き、
何処も彼処も
みな火の海にそ
ならん。

語句

  • 日輪……【一】〔名〕(1)(形が丸く輪のようであるところからいう)太陽の異称。(日本国語大辞典
  • やにわに……〔副〕(2)いきなり。突然。だしぬけに。(日本国語大辞典
  • おどろおどろし……〔形シク〕(1)耳目を驚かすようなさまである。(ハ)(音、声などが)人を驚かすように大きい。騒々しい。(雨、風などが)激しくすさまじい。(2)異様だ。気味悪い。恐ろしい。(日本国語大辞典

現代語訳

〈1〉

 空に二つの太陽がのぼる時、地上のものは焼きつくされるだろう。
 太陽が凄まじき暑さを引き連れて現れると、川は沸き立ち、山々は焼け、やがて家々の屋根からも炎が立ち上った。
 突然出現した(方の)太陽には神々しさがなく、その炎の内には怪しい影が居て喜んでいる。

〈2〉

 偽の太陽は災いの炎・禍波呑である。
 その者が地上に現れる時、驚かせるような音が響いたという。空から火の玉が降りる時、どこもかしこも皆火の海になるだろう。

解説

 本編中でまさにラスボス級の強さを見せつけたマガパンドンに関する記述は、やはりその熱量の凄まじさを物語るものだった。劇中の描写ではそこまででもなかったが、川が沸き山が焼け、家々も炎に包まれるという光景は、おそらくオーブが軌道上へ押し出さなければ早晩起こっていたものだろう。

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 ところで、この文章でも禍翼/マガバッサーのものと同じく、時制の不統一が見られる。これについて少し考えてみたい。〈2〉では「~けるとそ」とあり、禍波呑の降臨が伝聞であることがわかる。また〈1〉後半の影の話など、かなり具体的な描写があることから、禍波呑は実際に出現したことがあり、それが伝わってこの文書に記されたのではないかと考えることができる。その上で、推測の「ん」で終わっている文の意味を考えてみよう。〈2〉で顕著であるが、推測の文は伝聞や過去形の文の内容を変形して繰り返している。つまり、これは具体的な情報を一般化し、教訓として記している、と考えることができるのではないだろうか。

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 さて、本編でも意外と短時間の登場で終わったマガパンドン本体であるが、禍波呑の本体についての描写も少ない。史料中では偽の太陽の中に怪しい影が居て喜んでいるとあったが、本編でも同様の描写があった。挿絵は火の玉の中の禍波呑を描いたものだが、よく見ると首がネオパンドン・キングパンドンのように二つに分かれている。初期デザインが反映されたものか、何かの意味を持つものか、今後の追加史料が待たれるところである。

目次はこちら。 fukurami.hatenablog.com

オーブ『太平風土記』翻刻・解読 (1) マガバッサー・マガグランドキング - ふくらみ

*1:劇中では「まがぱどん」と読まれていた。

*2:文意により補った