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膨張し続けている

『太平風土記』翻刻・解読 (5) 鎌鼬呑

ウルトラマンオーブに登場した古文書『太平風土記』を翻刻して解説する記事です。今回は23話に登場しかけた鎌鼬呑(かまいたどん)について。

目次はこちら fukurami.hatenablog.com

鎌鼬呑(かまいたどん)】

登場:ウルトラマンオーブ第23話「闇の刃」

原文(一部)

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出典:オーブn話本編映像より。

釈文

[忽ちに風強く
吹き荒れけりと
思ふないなや

甚だ大きなる
鎌にて
切り裂きし
ことく

牛馬も家屋も
真二つに
なりにけり]

その魔物
鎌鼬
禍々しき
風にて

ありとあらゆるものを
切り裂きにけり
誰やらん鼬の姿せし
[巨大]なる死神
[現れけりと言ひた]り
【けれど、我にはその姿みえざりき】

※ []部は劇中で欠損していた場所や映らなかった箇所を『完全超全集』所載の画像にて補った部分。
※ 【】部は劇中および『完全超全集』の画像では一切確認できないが、『完全超全集』の「現代語訳」に記されていた部分。

現代語訳

急に風が強く吹き荒れたと思うやいなや、とても大きい鎌で切り裂いたように、牛馬も家屋も真っ二つになった。

その魔物、鎌鼬呑は禍々しい風でありとあらゆるものを切り裂いた。

誰だったか、鼬の姿をした巨大な死神が現れた、と言った。
【が、自分にはその姿は見えなかった。】

語句

  • たち‐まち 【忽・乍・〓】〔副〕(古くは多く「に」を伴って用いる)(2)ある動作や状態が、予期しないで突然起こるさまを示す。にわかに。急に。ふと。
  • やら‐ん(断定の助動詞「なり」の連用形「に」、係助詞「や」、動詞「あり」の未然形「あら」、推量の助動詞「む」の重なった「にやあらむ」の変化したもの

)(2)(副助詞的に用いられる)体言および多くは格助詞「と」を受け、不確実・不定の意を表わす。(日本国語大辞典

解説

ビルに三日月型の亀裂が入る事件をSSPが追った際、松戸シンが発見した『太平風土記』の記述。鎌鼬呑なる怪獣の存在が示唆されたが、実際にはジャグラスジャグラーが蛇心剣を使って放つ新月斬波によるものであった。劇中では冒頭に挙げた一画面、それも欠損した一部分のみが登場するにとどまったが、『完全超全集』所載の太平風土記原本の複製画像から、さらなる記述を拾うことができた。

『太平風土記』によれば鎌鼬呑には

  • 大きな風を吹かせる
  • 巨大な鎌で切り裂いたように牛馬や家屋を切断する

といった能力があったようだ。ここで着目したいのが「禍々しき風にて」という記述である。おわかりだろうか。これまで「禍々しき」といった形容がされてきたのは全て魔王獣だけである。戀鬼にはそういった記述はなかった。ということは、実は鎌鼬呑も魔王獣の知られざる一体であった可能性が……。基本的にはどの記述も「けり」「たり」と過去形で記されており、伝聞などに拠るもののようだ。巨大な死神というのはよくわからないが、もしかするとジャグラー魔神体だったりするのだろうか……。

さて、この記述において大問題となるのが、既に読者諸君が疑問を抱いただろう、〈劇中および『完全超全集』の画像では一切確認できないが、『完全超全集』の「現代語訳」に記されていた部分〉であろう。鼬の姿をした魔神が現れたという伝聞に続けて、自分には見えなかったという記述を補うものである。ここに『完全超全集』の画像を掲載できないのが心苦しいが、「現代語訳」*1で記されているような文言は史料画像には一切存在しない。しかしながら、この補われた謎の記述は大きな論点をはらんでいる。すなわち、『太平風土記著者本人の主観によって記された唯一の部分であり、著者本人が鎌鼬呑の起こした現象を目撃したことを示すのである。『太平風土記』編纂と同時代的な事件であったことがわかり、年代比定の上で非常に重要なポイントとなる。ただそれだけに、この謎の記述の出処が全く明らかでないのは残念極まりない。これは可能性に過ぎないが、『太平風土記』には異本が存在するのではないか。『完全超全集』編集部はそちらを参照した可能性がある。もうこれわかんねぇな。

fukurami.hatenablog.com

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*1:「現代語訳」とあるが、釈文に記したように古文そのものである。『完全超全集』の「現代語訳」はまっとうに現代語訳を行っている箇所がある反面、後半になるとどういうわけか、このように史料の翻刻文をそのまま載せるようになる。しかも、「※今回の現代語訳は必ずしも全文が正確に対応しているわけではありません」と注記があるように、微妙に本文と異なる箇所があったりする。例えば鎌鼬呑のものだと「その魔物鎌鼬呑」の部分が「その鎌鼬呑といふ魔物」のようになっている。どういうことなんだ。もしかすると古文書作成担当への発注文をそのまま掲載している可能性はある。作中内現実に即するならば、やはり異本の存在が指摘できよう。