ふくらみ

膨張し続けている

ウルトラマングレート(アメコミ版)を入手したので紹介するぞ

ウルトラマンG(グレート)をご存知でしょうか。

そう、1990年に円谷プロダクションがオーストラリアで製作したウルトラマンですね。
大平野の国らしい大らかな作風もさることながら、人材などの面でその後の平成ウルトラへつながる重要な作品でもあります。

(アフィじゃないです)

一応あらすじを確認すると、
UMA所属のジャック=シンドーは火星で邪悪生命体ゴーデスとウルトラマンの闘いに遭遇。ジャックはウルトラマンと一体化し、地球でゴーデス細胞や環境破壊が目覚めさせた怪獣たちとの戦いに身を投じてゆく……
といった感じでしょうか。

で、このウルトラマングレートにはいくつか漫画版があります。

一つは結構知られており、最近新装版が出た島本和彦版のもの。それ以外にも講談社『月刊ヒーローマガジン』に読切で掲載された森藤よしひろ版があります。

(アフィじゃないです)

ところが

実は、ウルトラマングレートには以上に加え、国外で発行された漫画版――アメコミが2作品存在するらしいのです。そりゃ海外ウルトラマンだしそのぐらいあるよなという感じですが、意外にも情報がない。なんだこれは。

というわけでアメコミ版グレート入手してしまったのでその内容を紹介する記事です。

fukurami.hatenablog.com

こういう本を作ったので一応その宣伝もかねて、その原稿を抜粋改変する形で進めていきます。

入手編

普通に米Amazonマーケットプレイスで中古品を購入。米Amazonでは1巻あたり数ドル程度で販売されているが、セラーによっては日本への発送に対応しておらず、発送可能な場合でも、十数ドルの送料と3週間程度の配送時間を覚悟する必要がある。

Ultraman ultracomics」「Ultraman Nemesis」などで検索するといくつか出てくるので、送料や、日本への発送に対応しているかを確認*1、住所は日本のものをアメリカ式に必ず直す*2。あとは普段のAmazonと同じくポチればよい。

追跡結果で税関通過に何日もかかってやきもきしているとアメリカ臭い匂いの封筒が家に届いたのでいざ、開封

1作品目: ULTRAMAN(Ultracomics)

Ultracomics 93年7~9月発売  B5判/全3巻/20~22頁(コミック部分のみ)/フルカラー

Writer: Dwayne McDuffie(#1-3)
Penciler: Ernie Colon(#1-2)
Inker: Flfredo Alcala (#1-2)
Art: Ernie Colon (#3)
Cover Artist: Ken Steacy (#1-3)
Letterrers: Dan Nakrosis (#1-2), George Roberts(#3)
Colorists: Clydene Nee, In Color (#1-3), Jason Doerck (#2)

▶概要

 1993年にアメリカのHarvey ComicsよりUltracomicsのレーベルで発売されたウルトラマングレートのアメコミの一つ。……そういえばグレートはオーストラリアで制作されたのに、なんでオージーコミックスじゃなくてアメリカンコミックスなんだ? ――そういう疑問をお持ちの方も多いだろう。実はグレートはオーストラリアではビデオ発売のみで、TV放映はされていなかった。海外における初のTV放映は、1992年1月~3月に米Sachs Family Entertainmentが放映したのが最初なのである。それで人気に火がついた……というような話は聞かないが、恐らくパワードの展開なども見据えてアメコミ化されたものだろう。

 本作は1巻1話収録のリーフとして発売された。アメコミの販売形態について解説しておくと、通常のアメコミはB5判32頁のリーフと呼ばれる月刊雑誌に1巻1話収録の形で発売され、人気が出た場合リーフをまとめた単行本が発売されることがある。各リーフはコミック部分と広告その他からなっており、コミックはたいてい20~22頁程度である。

 アメコミの特徴として制作が完全分業制であることが挙げられる。江戸時代の浮世絵のように、ストーリーを作るWriter、下絵を描くPenciler、ペン入れをするInker、写植するLetterrer、彩色するColoristなどのクリエイターが存在し、別個に作業するのである。本作のWriterであるDwayne McDuffieはDC ComicsやMarvelのスーパーヒーローものアメコミのWriterを数多く努めた人物で、近年はアニメ版ジャスティス・リーグの脚本を担当し、全米脚本家組合賞を受賞するなどしているようだ。

表紙(#1)

▶ストーリー

 入手困難ゆえ、各巻ごとにあらすじを詳述する。本編の3年後を舞台とし、ゴーデスの復讐を描く。

#1 REVENGE of the GUDIS PartI: Genesis

 Nebula M78の戦士Ultramanは、巨悪Gudisを追って3つの銀河を超え、ある無人の惑星に追い詰めようとしていた。しかしそこにUniversal Multipurpose Agencyの火星探査船が飛来、飛行士Jack ShindoとStanley Haggardは巨人と怪物の戦いに巻き込まれる。Jackは重傷を負い、Haggardは宇宙船ごと爆死した。力尽きたUltramanはGudisを取り逃がしてしまう。彼は責任を感じ、Jackと一体化するのだった。

 地球に戻ったJackはU.M.A.の戦士として、そしてUltramanとして怪獣と戦った。Ultramanが分離の方法を見つけると、彼は宇宙へ旅立ち、Jackは普通の人生に戻った。

 それから3年、Jackは怪獣との戦闘中に乗機のHummerを撃墜される。ところが怪獣は執拗にJackを追う。その正体はGudisであった。彼は復讐のため、そして地球を破壊するために舞い戻ったのだった。JackはDelta Plasma Pendantを使ってUltramanに助けを求めるが……。

 Gudisはゴーデスのこと。前半こそ原作1話の流れを意外にも忠実になぞっているが、地球に戻ってからはTV版の内容を指しているのか、見開きで数多の怪獣との戦いがイメージ風に描かれ、ジャックとグレートが分離したことが知らされる。急展開に驚いていると、3年後、プテラノドン的な怪獣とUMAの戦いにシーンが移る。……というわけで最初は原作どおりのコミカライズだと思っていたのだが、結局オリジナルの内容となった。Jackの顔は原作のジャックよりバタ臭い感じになっている。また原作の登場人物はスタンレー・ハガード以外に描かれることはなかった。

#2 REVENGE of the GUDIS PartII: Rebirth

 Jackからの信号を受け取ったUltramanは急ぎ地球へ舞い戻る。U.M.A.の攻撃をかいくぐり地球へ辿り着いたUltramanが見たのは、命絶えたJackであった。Ultramanは再び、自らの命をJackに与え一体化する。JackはU.M.A.基地で、Gudisが月へ向かい、月面コロニーで宇宙海兵隊と戦闘を起こしたことを聞く。Ultramanの知識を得たJackは、Gudisの真の狙いに気づいた。かつてUltramanが地球にいた頃、戦った怪獣たちの一部は月面に設けた監獄に幽閉していたのだった。

 月面に向かったUltramanだったが、Gudisは既に監獄を解き放っていた。怪獣軍団と戦うUltraman。だが長旅の疲れからか彼のエネルギーは限界に達していた。Warning lightが点滅し、UltramanはJackの姿へ戻ってしまう……。

 この世界のUMAは原作よりもかなり手広くやっているようで、月面基地でゴーデスと戦った宇宙海兵隊UMA所属だった。そしてグレートが実は一部の怪獣を倒しておらず月面に幽閉していたことが明らかになる。知性がなくやむを得ず暴れただけで責任を問えない怪獣を収監したらしいのだが、ゴーデスが解放したそのラインナップは、ブローズ・ゲルカドン・バランガス・マジャバ・シラリー。……最後のやつは大丈夫なのだろうか。

#3 REVENGE of the GUDIS PartIII: Victory

 人間の姿でGudisや怪獣軍団に戦いを挑むJack。だが敵うはずもなく、月面の峡谷へ落とされてしまう。

 Gudisと怪獣軍団は月面都市を襲撃する。U.M.A.が必死の抵抗に打って出るが、Gudisにより全滅。都市の破滅を阻むものは何もない――いや、そこに立ちはだかる影があった。Jackはすんでのところで助かり、再度Ultramanに変身したのだ。最終決戦が始まる。Ultramanは怪獣軍団を次々に倒す。だがGudisは月面都市の壁に穴を開け、Ultramanが塞ぐすきに地球へと逃走する。

 UltramanはJackの姿に戻り、Hummerで直接地球のGudisへ突撃する。Ultramanは狼狽するGudisを持ち上げ、そして太陽に投げ込んだのであった。  Gudisは倒された。だが人類を脅かす敵は数知れない。しかし人々はもはや恐怖に怯える必要はない。どんな危険、どんな脅威があろうとも、Ultramanがいるのだから……。

 拳銃一丁でゴーデスと戦うジャック。実に男らしい。グレートが#2で倒していた怪獣が冒頭でしれっと復活している。その後特に説明もなくグレートが復活、月面都市を背後に大決戦となる。最後は何度も復活する系の敵の処理方法としては非常にポピュラーな太陽落としで大団円となった。

 巻末で今後の続編が予告されているが、その通り翌年からはNemesis Comicsのレーベルで新たにUltraman作品が発表されることになる。また#1の広告ページでは日本のウルトラシリーズのこれまでの展開が詳述されているが、そこではグレートを皮切りに他のウルトラ作品も順次アメコミ化していくことが匂わされ、アメリカにおける日本文化の新たな開花を期待させるものであったが、その顛末は読者諸賢もご存知の通り。

2作品目: ULTRAMAN(Nemesis)

#4表紙

Nemesis comics 94年3~9月発売  B5判/全5巻/22~26頁/フルカラー

Writer: Larry Yakata(#-1-4)
Penciler: Ernie Colon(#-1-4)
Inker: Alfredo Alcala(#-1-4)
Letterer: Dan Nakrosis(#-1-4)
Colorists: Clydene Nee, Victor Navone (#-1), Elaina Edeen, Mike McAuliffe(#1), Ryan Salazar(#2), In Color(#2-4)
Cover: Philip Felex(#1), Ken Steacy(#2), Scott Hampton(#3), Lee Weeks(#4)

▶概要

 1994年に米Harvey ComicsよりNemesis Comicsのレーベルで発売されたウルトラマングレートのアメコミの一つ。パワードのビデオ発売にあわせ、前作からレーベルを一新、続編として完全にオリジナルなストーリーが展開された。内容はアメリカンな感じに独自性が強く、主人公も途中でジャック=シンドーからエース=キムラという日系アメリカ人に変更、宇宙規模の壮大な話になっている。

 Penciler、Inkerは前作よりErnie Colon・Alfredo Alcalaが続投しているが、WriterはLarry Yakataという日系人らしい人物に変更された。Yakata氏についての情報は少ないが、70年代以降ロバート・E・ハワード原案の英雄コナンシリーズでWriterを務めているのが確認できる。

 Harvey Comicsは本シリーズの発行を最後に、1994年に出版事業を停止している。Harvey Comicsは1941年にNYで創業し、50~60年代のアメコミ黄金期に事業を拡大したが、アメコミの衰退と共に経営は傾き、80年代にはMarvelに一部の権利を売却したり創業家の内紛などを経験している。1989年にカリフォルニアのHMH社に買収され、過去作の再版などを行うなかで、新規事業として開始されたのが、UltracomicsおよびNemesis comicsでのウルトラマンアメコミの発行だったのである。まさに時代柄というべきか、経営難の企業がジャパンマネーに頼った結果であった。しかしウルトラマンは必ずしもアメリカ人に受け入れられることはなく、Nemesisレーベルでいくつかの作品を出した時点で出版事業は停止となった。その後はハリウッドの映画原作を提供するなどの事業へ軸足を移したらしい。

#-1表紙

▶ストーリー

 こちらも入手困難ゆえ、各巻ごとにあらすじを述べる。本作は-1巻から4巻までの5巻から成っている。0巻は存在しないので-1の次は1である。-1巻では1巻以降の主人公エース=キムラがウルトラマンの力を得るまでの過程、1~2巻ではROBEXというロボット軍団の地球侵略、3~4巻ではゴーデスの復活を描いている。

#-1 Negative One

 地球を狙う宇宙の悪魔に挑んだUltramanは油断から敗れ、悪魔に捕らえられてしまった。

 長く退屈な宇宙探査任務に当たっていたJack Shindoは不意に宇宙船が撃墜される夢を見る。その夢の中でJackは過去にM78星雲からの帰途で謎の死を遂げたHayataという男の名前が心にかかる。Jackは導かれるようにHayataの故郷、日本へ向かう。

 地球の裏側、荒廃した紛争地帯ニューヨークでマーシャル・アーツ道場を営む引退した格闘家Ace Kimuraは暴漢に襲われた瞬間、交通事故で失ったはずの身体能力を取り戻し、日本の寺院のビジョンを見る。

 JackとKimuraはひょんなことから日本で出会う。二人で向かった北海道でKimuraは不思議な力で熊を退治するが、Jackはその時Kimuraの背後にUltramanのビジョンを目撃した。Ultramanが彼ら二人を選び助けを求めているのだと気づいたJackは、宇宙のUltramanの元に赴くべく、U.M.A.の最新鋭戦闘機ZIPを使おうとする。ところがU.M.A.司令部は許可せず、JackはKimuraの助けを得てZIPを強奪、Ultramanの元へ飛び立つ。

 Jackはついに悪魔の元へたどり着き、Ultramanを解放する。Ultramanは悪魔を倒すが、Jackは解放の際に殉職してしまった……。

 前作までの主人公ジャック=シンドーが死ぬというショッキングな展開。今回は体がそしてジャックと共にウルトラマンに「選ばれた」新キャラ・エース=キムラが登場、浅草・新宿・松山・北海道など日本の名所を観光しながら、悪魔に囚われたグレートのメッセージを読み解いていく。日本が登場する時点で嫌な予感がしたのだが、ブレードランナーほどではないにしろ、例によって謎ジャパンであった。「オ日月」と書かれた寺が出てきたりする。

 新主人公キムラはゆく先々でウルトラマンの力を発現してゆくが、いちいちスタンド風に背後にビジョンが現れたりする。なおハヤタの名前が冒頭で出てくるが、それがあのハヤタのことなのか、なぜM78星雲に行っているのかなど謎は多い。英語版Wikipediaでは本作を評して初代マンとグレートを混同している、と書かれているが、なんともよくわからない。

 メインの敵である「悪魔」(原文ではDaemon)は閻魔大王のような姿で、神通力のような力でグレートを拘束した。ジャックが悪魔に体当たりしてしまったことでグレートは解放されるのだが、それにしても死に方があっけなさすぎる。とても悲しい。ジャックはタケル殿並に死んでは復活している感じがあるが、今回は体が爆発四散したのかグレートの力でも復活できなかったようだ。

#1 ROBEX Dynasty

 Ace Kimuraは日本の高野山へ来ていた。Jackの死後Ultramanの力を受け継いだ彼だったが、なぜ自分が選ばれたのか、未だ運命を受け入れられていなかった。KimuraはU.M.A.のAyumiという女性と出会う。彼女はJackと親しい関係にあり、U.M.A.はKimuraを必要としているのだという。

 U.M.A.の直面する危機とは、ROBEXであった。Shima12と呼ばれる惑星でコンピュータが反乱を起こし、COGEMに率いられたロボットたちがアメリカ・ヨーロッパを侵略していたのだ。Kimuraは苦しむ人々を見て覚悟を決め、UltramanとなってROBEXに立ち向かう。そして彼は、Ayumiが自分に惹かれていることに困惑しながらも、ROBEXの本拠地へ迫ってゆく。

#2 The End of Time? --ROBEX Dynasty, PartII

 UltramanとしてROBEXに対抗するKimura。一方ROBEXもUltramanの正体に迫りつつあった。そしてU.M.A.はついにShima12の防御を回避する方法を編み出す。Kimuraは高速に改造したZIPに乗り込み、Shima12を目指した。

 Ultramanと人間の姿を使い分けながらKimuraはShima12の中心部へ向かう。しかしCOGEMはプルトニウム貯蔵庫を使った卑劣な罠でUltramanを追い込んだ。分析に基づいてCOGEMはUltramanを瀕死の状態に陥れる。その時、KimuraとUltramanの意識が奇跡的な一致を見せた。その結果、KimuraとUltramanは完全な一体化を果たし、新たな姿へと変わったのである。Kimuraが気づいた時にはCOGEMは倒されていた。意識だけになったCOGEMは宇宙に去り、地球には平和が戻ったのだった。

 コンピュータの反乱という超古典的テーマ。今どきはギャラクトロンくらいの捻りが必要だが、94年の時点ではまだストレートに通用したらしい。COGEM(Computer Gene Nemesis)をはじめとする敵もアメリカンな古典的ロボットっぽい。Shima12は“Planet”と表現されているが、太陽系の中なのか外なのかもいまいちはっきりしない。テーマの古典性も相まって、昭和ウルトラ2期にたまに見られる適当SF設定のような雑味が全体的に強い。なおShima12も元はUMAの基地だったらしく、前作以上にUMAが宇宙進出を成し遂げているらしいことがわかる。

 キムラの戦い方はジャックと違って多彩で、等身大で変身したり、敵が非武装の人間を警戒しない(!?)ことを利用して姿をこまめに切り替えるなどしている。ウルトラマン的ではないが、アメリカのスーパーヒーローらしいドライな戦い方である。キムラは各地のROBEX前線基地を潰しながら、シマ12のセキュリティをかいくぐり、ボスであるCOGEMと対峙する。そして最大のピンチという瞬間、“Perfect amalgam of both”と表現される完全合体形態となってCOGEMを撃破している。コスモスのミラクルナのようなものだろうか。

#3 The Incredible Return of GUDIS

 地球はROBEXの侵略から立ち直りつつあった。Kimuraもかつての道場の子どもたちを連れて生活を立て直していたが、地球の治安は完全に回復してはいなかった。そんな折、U.M.A.は戦場跡で宇宙生物の破片を回収する。実はそれはかつてUltramanとGudisが戦った際に千切れたGudisの触手の一部だった。

 Kimuraはある日、快楽殺人鬼Raptorから市民を助ける。RaptorはKimuraに敗れさまよう内、偶然U.M.A.の基地にたどり着く。そこで彼はGudisの触手に触れてしまい、怪獣化してゆく。ところが彼の体に異変が生じる。体に付着したKimuraの血液によって、Ultramanのクローン、Blue Ultramanへと変身してしまった。Blue Ultramanは再生したGudisとともに街を破壊。そして二人のUltramanの決戦が始まる……。

 敵も含めてオリジナル展開だった#1~#2と異なり、本巻以降はゴーデスの再来と悪のウルトラマン・ブルーウルトラマンとキムラの戦いが描かれる。ROBEXのせいでマッドマックス2状態となったアメリ東海岸(そういえば#-1の時点で紛争地帯になっているのはどういう訳だろう)で偶然回収されたゴーデスの破片が殺人鬼と融合したことで復活、さらにキムラの血のせいで悪のウルトラマンが誕生する。

 地味に本作は正式な作品での青ウルトラマン初登場となる。ブルー族自体は2期頃の児童誌で設定が出ているが、一個のキャラクターとなったのは本作が初となる。またライバルとしての悪ウルトラマンでも、シャドーに先立って初と思われる。まあ多分脚本家はブルー族とかそこまで考えてはいないだろうけど。性格は元がヒャッハーな殺人鬼なのでとにかく残忍。

#4 The Incredible Return of GUDIS PartII: The Source of Strength

 赤と青、同じ力を持ったUltraman達の激闘。決着はつかず、生身での殴り合いになる。軍が近づいたためRaptorは逃げるが、Kimuraは暴漢に襲われ瀕死となる。

 その間にもGudisとBlue Ultramanは街を破壊し続け、治安は乱れてゆく。さらにGudisは街に疫病を流す。人々はUltramanに見捨てられたのかと絶望し、パニックと恐怖が覆う。一方KimuraはAyumiの部屋に倒れ込んでいた。KimuraはAyumiから全ての事情を聞くと、宇宙のGudisの元へ飛びたった。

 Tohoku宙域のある小惑星UltramanはGudisとBlue Ultramanに相対する。しかしUltramanに力は残されていなかった。時間切れとなってKimuraへと戻ってしまうUltraman。その刹那、Kimuraの意識は時をさかのぼった。

 “Izanagi”と“Izanami”による国産み、そしてサムライたちの戦い。Kimuraは主君AsanoのためにKiraを殺したOishi Kuranosukeの姿を見る。そして彼の子孫が“Kimura”と名前を変えたことも。Kimuraは希望を取り戻した。そして自分が一人ではないことも。再起したUltraman小惑星の内部に潜ると重力を強化してGudisらを押しつぶす。そしてそのまま、宇宙の果てへと放逐した。

 地球には平和が戻った。KimuraはAyumiの元へと戻り、そっと肩を抱く。そう、もう一人ではないのだ……。

 ――えっ
 中盤でブルーウルトラマンとゴーデスに敗れて精神世界入りしたキムラが日本の歴史らしいものを最初から眺めてゆくのだが、まずイザナギイザナミによって島が作られ……というシーンで描かれているのが3人の異形のウルトラマンとグレートらしき姿。なんで3人?アマテラスとツクヨミスサノオか?という疑問を晴らす間もなく武士の時代がやってきて、いきなり忠臣蔵が始まる。ああそうなんだ。キムラは大石内蔵助の子孫だったんだ――???だから何だというのか。なぜそれでキムラが元気を取り戻すのか。忠義のために死んだけど子孫という希望を後に残せたし俺も希望を捨てちゃいけないな、みたいな感じだとは思うのだが、正直困惑するしかない。それ忠臣蔵である必要あったのか?多分元ネタを知らないアメリカ人は感動できるんだろう、知らんけど。個人的には雑な日本史ネタより、道場の子どもたちの頑張る姿とかそっちの方が良かったと思う。理解できないのは筆者の英語力が足りないせいだと思いたい。

 気を取り直して読んでゆくと、結構ゴーデスがえげつない。疫病(Plague)と書いてあったが絵の方では完全に毒ガス。痛々しく人が死んでいくのはTVではとても描けないだろう、ガチな侵略の光景である。しかも、その作戦は単にウルトラマンを燻り出すためだったようだ。さらにえげつない。

 ラストはアメリカなのでアユミとキムラがラブな感じを匂わせて終了。絵柄もそうだが展開がいちいちバタ臭さが濃く、正直通読するのは疲れる。そういえばニューヨークが最初から荒廃していた理由も明かされなかったし、#-1で突然出てきたハヤタの伏線も一切回収されていない。もっと続けられたら、いつか初代との関係も明かされたりしていたのだろうか。ちなみに、巻の途中には広告以外にも本編のスチル写真ページなどが挿入されていることがあるのだが、実は#1・#2のそれが全てパワードの画像なのである。……アメリカ人はもしかしたら、初代とグレートとパワードの区別が一切ついていないのかもしれない。

 数多のツッコミどころはあるものの、アメリカらしさ、オリジナリティを感じたい方はぜひ一度読んでみてほしい。少なくとも話のタネにはなるので、損をしないことだけは保証しておく。


……というわけで、以上2作品、いかがでしょうか。何なんだろうこれ、というのが正直な感想ですね。この2作品以外にもいくつもの「知られざる」ウルトラ漫画を紹介する本、C94で頒布します。よろしくおねがいします。

fukurami.hatenablog.com

*1:一度注文画面に行かないとわからないことがあり要注意

*2:例えば「Tsuburaya Prod. 3-6, Maruyama-cho, Shibuya, Tokyo」など