ふくらみ

膨張し続けている

ゴモラの擬人化は何人&何種類いるのか――ウルトラ怪獣擬人化計画と+α

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「はいたい七葉」20話より

はじめに

ウルトラ怪獣擬人化計画。そろそろ漫画版2作品の新刊も発売され、11月にはアニメ版の劇場版である「怪獣娘(黒)」も公開されるなど、かなりの盛り上がりをみせている。

かくいう筆者も企画開始当初からしっかり追っており、かつてファンの間でも異端扱いされた頃を想いながら、ガイさんがアニメ見てワイワイしたりジャグラーさんがアニメ版に出演したり、擬人化企画が元でザンドリアスが新造されジードに出演するなど、いつの間にか半分メインストリームに躍り出た現状を、思えば遠くへ来たもんだ、的な温かい目で見守ったりしている。

ところで筆者は実はレイオニクスなのでゴモラが好きであり、もちろん擬人化ゴモラも愛しており怪獣酒場で買ってきた「怪獣珍味ゴモラの皮」を眺めながら「実質スク水の千切りじゃん」とのたまったりS.H.Figuartsゴモラの尻尾を切断して(そういうパーツがある)「前シッポ切断!!!」などとふざけたりしているのだが*1それは置いておいて、色々な媒体を眺めるに思うのが、次の疑問である。

ゴモラちゃんって何人いるんだろう……?

例えば現在一番人口に膾炙しているだろうアニメ版のゴモラ(黒田ミカヅキ)は関西弁まじりだが、爆天童先生の漫画版では常に標準語を話し、別人格であることが知られている。それ以外にも、feat.POP版などいくつかのバリエーションが既に存在しているのだ。原作ゴモラの多種多様さには及ばないものの、擬人化のほうもかなりヤバい。とりあえずここで一度まとめ、これからも広がり続けるだろう擬人化計画ワールドに備えよう、というのがこの記事の趣旨である。

とにかく最後まで読んで欲しい。

擬人化計画の系統

そもそも、ウルトラ怪獣擬人化計画には大きく分けて5つの系統があるとされている*2

  1. 角川/電撃版
    恐らく最もポピュラーなもの。G'sマガジン連載・漫画ギャラクシー☆デイズ・アニメ版が属する。
  2. ぱすてるデザイン/POP版
    企画では最も先行していた。POP氏イラスト・漫画feat.POPが属する。
  3. PLEX
    初期(2014~15年)にPLEXから発売されたいくつかのフィギュア(レッドキングなど)+ラバーストラップ。*3
  4. 講談社
    2017~の後発。漫画ウルトラジャーニーが属しフィギュアなどが発売された。
    ウルトラジャーニー ツインテール少女とツインテールな僕(1) (シリウスKC)
  5. 飲食店版
    2018年に突然オープンした六本木の飲食店「KAIJU MUSUME 6」での擬人化。

そんなの知らんし、みたいな人も多いだろう。筆者もフィギュアとかさっきまで忘れてたし。やたらと企画が分立しているのがウルトラ怪獣擬人化計画の特徴で、しかも基本的に相互に交流がない。企画段階での確執やら何やら色々噂はされているものの、まあ大人の事情なのでここではあまり立ち入らない。

ここで重要なのが、各系統によってデザインがバラバラだということである。例えばキングジョーは上記全5系統で擬人化されており、次点でゼットンエレキングあたりは4系統の擬人化がある。しかも各系統の中で微妙に差異があるというのが厄介な点で、新規ファンが容易に立ち入れない闇を生み出してしまっているのだ。

さて本題となるゴモラは人気キャラだけあって上記系統のうち3系統で擬人化がなされている。以下、系統別に解説してゆこう。

1.角川/電撃版

オタクコンテンツ界の覇者・角川幕府ことKADOKAWAを中心として展開されているシリーズ。電撃G'sマガジン・電撃ホビーマガジンの連載から始まったことから電撃版、アスキー版とも。twitterに絵を上げると公式がエゴサしてRTしてくれる。

1-1.原作イラスト

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公式サイトの紹介ページより

角川系ゴモラの全ての始祖といえるイラスト。イラストレーターはminoa氏ニトロプラス所属)。初出は「擬人化計画」連載初回の電撃G'sマガジン2013年1月号であり、角川系擬人化の一番手でもある偉大なイラストなのだ。イラスト集『怪獣大図鑑』Vol.1*4に収録された他、多数のグッズに使用されているので、多分誰もが一度は眼にしたことがあるはずだ。

古代怪獣→古い→旧スクという天才的なひらめきによってキャッチーさを出しつつ野趣あふれる角・腕・脚とのギャップで落としにかかるマジエンジェル。悪戯っぽい表情や髪型もキュートで愛らしくて何よりもおなか――あまり語ってもしょうがないので次にゆこう。

1-2.ギャラクシー☆デイズ

いくつかの擬人化怪獣のデザイン*5も手がけている爆天童先生による4コマ漫画版。G'sマガジン14年7月号より連載。単行本4巻まで。連載当初は「4コマ(仮)」というなんともあやふやな名称だったが、単行本で「ギャラクシー☆デイズ」となった。

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単行本2巻p.68より

本作のゴモラは主人公。マイペース・天真爛漫で元気なタイプで、一人称は「ボク」。標準語を話すが、時折語尾が「ゴモ」になる。背がやや小さめで相棒のベムスターに肩車されることも多いが、ベムスターからは折に触れて性的な視線を浴びるなどしている*6。かわいい。こうみえて服を着ていない(哲学)。

ベムスターとともに円谷学園怪獣図鑑制作部に所属し、部活動という名目(ほとんどその存在に触れられることはなくなってゆく)で他の擬人化怪獣たちと交流したり我の強すぎる怪獣たちに振り回されたりする(メフィラス軍団と大書されたTシャツを着させられたりなど)。

 (アフィじゃないです)

1-3.アニメ「怪獣娘

anime.dmkt-sp.jp

2016年秋クールに第1期、18年冬に2期が放送されたアニメ版。アギラらカプセル怪獣を主人公にFlashアニメ的な感じでSDキャラが動きまくる。18年11月に劇場版「怪獣娘(黒)」が公開予定。

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cv.諏訪彩花。1期8話劇中より

本作のゴモラはGIRLSにおける主人公たちの先輩格にあたる。1期8話の大阪回で初登場、2期でも準レギュラー的に頻繁に登場する。

関西育ちの非関西人という設定だとかで、主に標準語だが時折関西弁が交じる*7。一人称は「わたし」。明るく天真爛漫、人懐っこい性格だが気配りモンスターな面もあり、結構まめに後輩たちの面倒をみており本当に素晴らしい人格をしている。ギャグには一家言あるタイプらしく、いついかなる時もセリフの端々にギャグを織り交ぜることを忘れない。しかし一発芸を頼まれると「太陽の塔」という体当たりギャグをしたり定番ポーズの元ネタが古い漫画だったりとこだわりが謎。後述の前日譚小説時点から大怪獣ファイトの強豪選手であり、大阪でトークショーをしたりする人気者でもある。

1-3-1.黒田ミカヅキ

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1期10話より

怪獣娘ゴモラ人間態。かわいい。minoa先生による描き下ろしイラストも存在しているぞ!!パーカーかわいい。
アニメでも制服姿メインで1期10話や2期にガッツリと登場。

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公式Twitterツイートより

1-3-2.小説版

怪獣娘」の小説版にも上2者と同一人物であるゴモラ/黒田ミカヅキが登場する。登場するのは前日譚『始まりの物語』第1話「大怪獣ファイト!」(森瀬繚)およびネット掲載版4話(谷崎央佳)*8。基本的に設定・性格などは共通だが、前者ではアニメと並行企画だったためか、やや関西弁が多めで一人称が漫画版と同様に「ボク」。後者ではアニメとほぼ同じ性格のようで、アギラたちの特訓の相手をしたり関西人なのでギャグの指南をしたりする。

(アフィじゃないです)

1-4.水中ニーソ化計画

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写真集『ウルトラ怪獣水中ニーソ化計画』(2016.7) pp.24-25より。

実 写 版。

アーティストで、水中で女の子にニーソを履かせた写真集ばかり出している*9古賀学氏がウルトラ怪獣擬人化計画とコラボして生まれたサムシング。水中で目を開けるのって痛くないんだろうか。

デザインは従来の角川版を踏襲しているが、水中ニーソ化計画なので脚部分はニーソ化*10スク水はどういじってもスク水であるのだが、原作イラストはスカート状のひだが後ろまで続くいわゆる「旧旧スク」型*11だが、こちらは前面のみの「旧スク」。

ウルトラ怪獣水中ニーソ化計画

ウルトラ怪獣水中ニーソ化計画

(アフィじゃないです)

1-4-1.水中ver.

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ウルトラ怪獣水中ニーソ化計画』p.41より

写真集の発行にあわせてminoa氏がお描きになられた水中モードゴモラもとい水中バージョンゴモラ。写真集および『大図鑑』Vol.3に収録されている。ねえセーラー服水着ですよ!!! ねえ!!!?

……ゴモラが潜水艦だということがこうして実証されたのである(錯乱)。水中なので水中モーターと思しきパーツが付属、ハイパーカブトっぽいヒレまでつくサービス。実は光速モードゴモラだったか……。

1-EX.スカルゴモラ

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公式サイトの紹介ページより

一応別怪獣なので番外編。

ジード放送に合わせてminoa氏が描き下ろした公式擬人化怪獣。ゴモラレッドキングフュージョンなのだが、そう。だいたいゴモラなのである。ネットで局所的に物議を醸したが、まあ原作でもそんな感じだし名前もゴモラだし。

とにかく正統派悪落ちっぽいゴモラにアレンジされていてその筋の者には完全に目がない感じになっている。

1-EX2. メカゴモラ

この記事を書き終えたとたん電撃G'smagazine2018年10月号に掲載された。

ルーブでも印象的な活躍をしたメカゴモラをまたしてもminoa先生が擬人化!

全体的な印象を大幅に既存ゴモラから変え、クールで無機質、儚げな表情が印象に残る。しかし角の配置はもちろん、実は髪型も本家ゴモラと似ていたりする。かわいい。

アオリは「ゴモラ最強は私なんだから!」と、やはり公式もゴモラ擬人化の乱立を意識しているもよう。

2.ぱすてるデザイン/POP版

イラストレーター・POP先生のイラストを原作としてぱすてるデザインを中心に展開されている系統。企画の開始はこちらのほうが先だと言われており、実際角川版よりも先にアニメ化されている(「はいたい七葉」20話*12)し、画集発行もこちらのほうが1年早い。が、暗黒KADOKAWA帝国の広報力には勝てず、知名度は低め。キャラデザに統一性があるとかかわいいとか面白いとかいいところが満載なので怪獣娘から入ったラブライバーもぜひ漫画から読んで欲しい。

2-1.原作イラスト

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『ウルトラ怪女子』p.2より

POP先生による本系統の始祖。14年夏コミ(C86)企業ブースで頒布された画集『ウルトラ怪女子』に収録(なんと巻頭である)。角川版と異なり野趣あふれる原始風味のコスチュームである。古代怪獣だから。露出が多いのはPOP先生の平常運行なので気にしない。

最大の特徴は角川版のように角を生やすのではなく、あくまで髪型のアレンジとしてあの特徴的な三日月形を作り出している点である。POP版擬人化はこのように極力自然な人間のボディを用いて怪獣の特徴を表現しようとする傾向があり、個人的には好感がある(角が生えているのはそれはそれでめっちゃ好き)。その気になればコスプレも楽勝だし誰かやってうちのブースで売り子してほしい。嘘です。

2-2.漫画版「feat.POP Comic code」

風上旬先生によるPOP版の漫画版。『ヤングチャンピオン』2015年no.4より連載中。現在単行本5巻。現行作品を含め細かいウルトラネタをちまちまと毎回拾ってくる方の漫画版。新刊が出ると作者がエゴサして感想をRTしてくれるしちょくちょくトークショーをするので裏話も色々と聞けたりする。

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単行本2巻p.134より

5巻にしてついに表紙を飾った本作のゴモラはキャラデザは原作を踏襲、城好きの関西人(一人称は「ウチ」)となっている。無邪気で底の抜けたような明るさのコテコテ関西人キャラ。31話(2巻)で怪獣墓場に初登場、地球に帰りたい組としてジャミラと仲良くなる。その後2人で地球行きのはずがゴモラだけ地球に到達してしまい大阪観光したりしている。

余談だが尻尾は自分の意思で切断が可能。そして焼いて食べると美味しいらしく40話(3巻)ではゼットンジャミラと一緒に笑顔で自分の尻尾を頬張る姿が描かれた……。「焼いてたべよか!」じゃあないんだよ。ジャミラのものすごく微妙な表情が必見。

(アフィじゃないです)

3.KAIJU MUSUME6版

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イラストレーター・Utomaru氏のイラストを元にした怪獣コスチュームをまとった女性キャストが接客するタイプのエンターテイメントレストランだとか。2018年1月に開店、どうやら1年間限定らしいので早めに行っておきたいところ。スコアはGoogleで4.0、食べログで3.03。インターネットから予約できるよ!

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開店時の告知記事より

とりあえずこれが原作となるイラスト。Utomaru氏はポップでレトロめな絵柄が特徴で、CDジャケットの提供をはじめサブカル系のプロダクトに多く携わっているようだ。頭に角が生えている点は角川版に似ているが、服のデザインは原作怪獣の上半身に準じる。角の生え方は角川版のように頭の両側から生えるのではなく三日月形が乗っかる形。この形は原作怪獣に則ったもので好感が持てる。

そしてそれが実写化されるとこうなる。

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公式サイトのキャスト紹介ページより

三次元女性個人に関する論評は筆者の意図するところではないため差し控えたいが、コスチュームの現実的な落とし所がこうなるという点は注目に値するだろう。

ゴモラをイメージした食品や飲料もあるらしいので、一度実見してみるのがいいんじゃないだろうか。

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公式サイトのメニュー紹介ページより

さて

ここまでウルトラ怪獣擬人化計画のプロジェクトごとにゴモラの擬人化が何人いるのかをまとめてきたが、結論としては
――え、ふ ざ け る なだって?? ふむふむ。こんな情報Wikipediaとかpixiv百科辞典見れば載ってる。切り貼りじゃねえか馬鹿にするな、と。君の言い分はもっともだ。

白状しよう。この記事にこれまで書いてきた内容はほとんどWikipediaとかに書いてあるから全然新規性はない!!ここまで読んでもらったところ申し訳ないが……



フゥーハッハッハッハッハ!!!!!!!!!

馬鹿め!!!!!

このブログでそんなクソバイラルメディアみたいな真似をするわけがないだろう!!!!




というわけで、ここからがこの記事の本題である。

ここからが本題だ

ゴモラの擬人化の嚆矢、それはウルトラ怪獣擬人化計画の開始から遡ること9年前……2004年にあったのである。

それこそが――この作品である。

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特撮エース』Vol.2 p.197より

井上行広ゴモラちゃん」!!!

説明しよう!「ゴモラちゃん」とは『特撮エース』Vol.2(2004年3月)に掲載された読み切りショート漫画(8ページ)である!!

作者の井上行広は1996年に週間少年ジャンプで水泳漫画「ドルヒラ」を連載*13、その後『ガンダムエース』で「アクシズのハマーンさん」などを連載している。絵柄は多岐にわたるが、近年の漫画作品は本作のようなデフォルメの強いタッチで4コマが多い感じだ。

本作の擬人化ゴモラは下半身が大幅にアレンジされた怪獣タイプで、上に角の生えた幼女フェイスが乗っかるという構成である。角の形状などはKAIJU MUSUME6版に類似しているが、大きな特徴として後世の擬人化では省略されない鼻面の前ツノが無いという点があげられる。

ストーリー

さて肝心のストーリーである。

(あらすじ)自称「なんでも知ってる小学生」怪獣殿下は同級生からアホ殿下と罵られてきたが、偶然発見した怪獣の卵を孵化させて一発逆転を狙う。そして産まれたゴモラちゃんに「おにいちゃん」と呼ばせ手なづけようとするが、もちろん怪獣であるゴモラちゃんは一筋縄でいくわけもなく……。

という感じで、主人公である少年がゴモラちゃんをどうにかにしようとするがゴモラちゃんからは餌扱いされたり尻尾でフルボッコにされたりなど散々なめにあうというギャグ漫画である。主人公はなぜか殴られると阪神の選手の名前を叫ぶ。最後はどうにかこうにか共存関係にまでもってゆき続編も……? と期待させるがその後音沙汰はない。作者はHPで「出来れば続きが書きたかった」と述べている*14ので可能性はあったのかもしれない。

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特撮エース』Vol.2 p.200より

まあ概括すれば、20世紀末以来の妹ブームの流れに位置づけられるストーリーといえよう。

擬人化の歴史における本作の意義

本作がいかに怪獣擬人化史において偉大なマイルストーンとなったのかを述べておきたい。

昨今、完全に市民権を得た観のある「擬人化」(萌え擬人化とはそもそもいつ始まったのだろうか。Wikipedia独自研究タグがついている記述では2001年頃の「しいたけちゃん」や2004年頃の「びんちょうタン」をブームの嚆矢に挙げている*15が、概ねこの記述は正しいものと思われる。

筆者がこよなく信仰する萌えミリの始祖神にして覇者である島田フミカネ先生がご出身なされた「制服兵器兵站局」は2002年に設立されたが、その用途は半角二次元板「陸海空兵器少女造兵廠」スレの保管庫であった*16。思い起こせば虹裏からOSたんなどを生み出したふたば☆ちゃんねるの設立は2001年であり、それ以前から同人界隈で根付いていた萌え擬人化の種がインターネットという新たな大地を得て花開いたのがこの時期だ、と言えるだろう*17

しかし、2001年前後の段階での萌え擬人化はあくまでファン活動の一部であり、大規模な商業化など思いもよらないことであったのは想像に難くないし、そこに一石を投じたのが「びんちょうタン」であったのも恐らく間違いないだろう。その後アニメなどオタク方面での盛んな商業化を経、2010年代にかけて「ゆるキャラ」の興隆も相まって現在の恐るべき状況に至るのである。

さてそこにきて、本作の発表された2004年3月という年代は実に微妙なところである。

萌え擬人化という行為が認知を広げる一方で、なかなか大々的に商業ルートで展開するほどブームが到来してもいない。そんな時期にあってポツン、とオタク雑誌『特撮エース』に掲載された本作は、ウルトラ怪獣初の商業媒体における擬人化*18であり、しっかり「©円谷プロ」の表記が入った初の公式萌え擬人化でもあるのだ。

作者である井上氏の先見性によって生み出された本作「ゴモラちゃん」は、擬人化ブームの中で産まれた現行「擬人化計画」に先立つこと数年、勃興する萌え擬人化ジャンルの中においても円谷怪獣コンテンツが立派に通用することを示した偉大なる一里塚であった。まあ一回限りの連載となってしまったのが残念ではあるが……。

コンテンツが寿命を保つにはどうすればいいのか。答えは簡単だ。消費者・市場の動向をいち早くつかみ自らの変容も辞さないラディカルな姿勢を取り続けることである。少子化によって従来の市場が急速にしぼむ中、青年層以上にアピールする手段としての「擬人化」は当然の選択といえる。本作は円谷コンテンツが2004年の時点ですでにそうした変容を許容できる柔軟性を備えていたことの証左でもあり、そして現在のコンテンツ再興隆を予言する存在であったともいえるのではないだろうか。

おわりに

さて、大幅に脱線した気がするが、とりあえず本記事の主題であるところの、「擬人化ゴモラが何人いるのか」という結論に答えを出しておきたい。

まずデザインの数で言えば、次元の差による細かい違いを無視すると

  • 角川版(by minoa氏)=☆デイズ、アニメ、水中ニーソ
  • 黒田ミカヅキ(by minoa氏)=アニメ
  • 水中バージョン(by minoa氏)
  • POP版(by POP氏)=feat.POP
  • KAIJU MUSUME6版(by Utomaru氏)=飲食店キャスト
  • ゴモラちゃん

6種類

次に人格の数で数えると(イラスト単体は無人格なためカウントしない)、

  • ギャラクシー☆デイズ
  • アニメ版=黒田ミカヅキ=小説版
  • feat.POP Comic code
  • KAIJU MUSUME6キャスト
  • ゴモラちゃん

5人となる。

参考までに怪獣の方のゴモラについてスーツを基準に数えると(正統映像作品のみ)、

の10種類、人(獣?)格別で見ると

の12匹となり、さすがにこちらの方が多いが、50年の歴史のある本家に比べゴモラちゃんを入れても14年あまりの歴史しかない擬人化がこれほどのバリエーションを獲得しているのは驚くべきことである。

なにはともあれ、ウルトラ怪獣擬人化計画ひいてはウルトラコンテンツ全体の今後の繁栄(そして擬人化ゴモラのかわいいイラストがドチャクソ増えること)を祈ってこの記事を閉じることにしよう。




……というわけで、↓の同人誌を作っている最中にたまたまみつけた「ゴモラちゃん」をぜひとも紹介したい思いだけで書いた記事でした。ゴモラかわいいよゴモラ

fukurami.hatenablog.com



以下ダイレクトマーケティング

映画「怪獣娘(黒)」の前売券情報はこちら! チケット情報 | 怪獣娘(黒) | ウルトラ怪獣擬人化計画

事前登録しよう!! ultra-batbre.bn-ent.net

記事の内容とは特に関係がない

*1:それ以外にもサイバーカードやウルトラカプセルの擬人化版を二次創作したりしている

*2:Wikipediaより

*3:2018年にアスキーから発売された公式ファンブック(ウルトラ怪獣擬人化計画 公式ファンブック)には他の4企画が掲載される反面、本企画のみ一切触れられていない。ラバストが角川版のゲーマーズイベントで販売されるなどしており、広義には角川版の一部と捉えるべきかもしれない。

*4:ウルトラ怪獣擬人化計画怪獣大図鑑Vol.1』2014年冬コミ(C87)企業ブースで頒布、のちゲーマーズでの展示会等で販売。通販あり

*5:ペガッサ星人・シルバーブルーメ・ノーバなど

*6:その一方でゴモラからベムスターへの束縛もかなり強いように思われる。世間に言う尊いという関係性である。

*7:といっても1期8話の登場時が主で2期ではほぼ標準語

*8:アニメ(2期)/スペシャル | ウルトラ怪獣擬人化計画

*9:グラフィックデザイナーや映像作家としての活動も行っている。が、Amazonで検索すると1080円の水中ニーソ写真集を毎月出しているので正直ドン引きした

*10:ちなみにこのゴモラニーソはこのサイトで販売されている。

*11:『怪獣大図鑑』Vol.1表紙より確認可能

*12:沖縄ローカルの5分アニメ。どちらもPOP先生がキャラデザという共通点から。20話(2期第7回)「はいたい!ウルトラ怪獣?!」で突然テンペラー星人エレキング・キングジョーメフィラス星人ゼットンを探しに沖縄へやってくる。OPから最後までウルトラネタも多く怪獣娘より10倍くらい面白い。CVはドラマCDとは別。2013年に琉球朝日放送AT-Xで放送、のち14年にMX,tvkほか。

*13:堀井秀人名義。全14話、単行本2巻。

*14:http://www.geocities.jp/yukihiro6717/sakuhin2.htm

*15:びんちょうタンの方は朝日新聞の記事<web archive>における伊藤遊氏のコメントが典拠

*16:https://dic.pixiv.net/a/%E5%88%B6%E6%9C%8D%E5%85%B5%E5%99%A8%E5%85%B5%E7%AB%99%E5%B1%80

*17:申し訳ないのだが、腐女子界隈については全く存じ上げないので誰か適度に教えて欲しい。

*18:キッズが初な気もするが、萌えという意味では多分初。それ以前の何かをご存知ならば教えて欲しい。

*19:毎回死んでるがいちいち数えても仕方がないのでまとめて1とする

*20:GSTEは5匹のゴモラザウルスを密輸しているため最大であと3匹いる可能性がある