ふくらみ

膨張し続けている

アニゴジにおけるゲマトロン/ゲマトリア混在問題に決着をつけよう

ゴジラS.P、ついに最終回!

いやはや、SFファンかつゴジラファンな自分にとってはラーメンライスのおかずに焼きそばパンが出てきたような美味しさ。特に最終回の████████が███したり██の███が████████████シーンには感激させられましたね!!

というわけで今回はアニゴジの話です。

え、S.Pの話じゃないのって? 当たり前だろアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」「決戦機動増殖都市」「星を喰う者」の話に決まってるじゃないか!!!!

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「星を喰う者」より

ゴジラS.Pは現代から地続きの技術にアーキタイプというスパイスを加えた近未来SFでしたが、同じSFでもそれとは対照的に未来感・宇宙感に寄せたのがアニゴジ3部作でした。

宇宙人からの技術導入を背景に数多のSF設定・SFガジェットが盛り込まれ、恒星間移民船〈アラトラム〉号や〈ナノメタル〉などが印象的でした。中でも雰囲気作りに役立っていたのが、異星人エクシフの操る〈ゲマトロン演算〉

ゲマトロン演算とは何かと言うと、

【ゲマトロン演算】エクシフが独自の数学体系に基づいて運用している未来予測技術。亜空間飛行をトラブルなく行うためだけではなく、エクシフが行うガルビトリウムの神託にも使われていると考えられる。(2章パンフより引用)

まあ要するに人類には理解できないなんか凄い計算で未来が分かったり亜空間が航行できたり色々なものが分析できたりするという奴*1

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視覚化されたゲマトロン演算(『怪獣惑星』ワープシーンより)

で、このゲマトロン演算なんですが、ところによっては「ゲマトリア演算」になってたりすることが既に知られています。設定の不統一じゃん! と叩かれる材料にもなっているようなのですが、待ってほしい。一見表記のゆれに見えたとしても、実はその裏に何らかの使い分けが存在していて、制作陣の深い意図を我々が見逃してしまっているだけなのかも知れない。そうは考えられないでしょうか。

使い分けがあるとすれば、考えられるのは以下の3つの可能性でしょう。

①同じようで実は違う演算方法を指している
②種族による言語の違いが反映されている
③特に違いはない(ただの表記ゆれ)

というわけで、とりあえず「ゲマトロン」あるいは「ゲマトリア」が含まれるセリフを全部書きだしました

目次

  • 1.アニメ本編
    • 可能性①同じようで実は違う演算方法を指している
    • 可能性②種族による言語の違いが反映されている
  • 2.パンフレット
  • 3.小説
  • 4.コミカライズ
  • 5.結局のところなんでなのさ~アニゴジ制作過程からの考察
    • 結論

*1:そういえばSPにもなんか凄い計算で未来がわかるやつ出てきましたね。そっちは原理が明らかにされてますが

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ウルトラファイト雑考番外地:放送情報・人名録・文献案内

ウルトラファイト50周年を記念して連載した「ウルトラファイト雑考」、お陰様でそこそこ好評をいただきました。

ただ、執筆していく中で考察したり材料を集めたにも関わらず、内容に入れられなかった情報がいくつかあります。折角なので、番外編としてそのうちいくつかを一つの記事に押し込めて紹介したいとと思います。

目次

シリーズ

  1. はじめに/時期区分について
  2. 着ぐるみのバリエーション
  3. 撮影日程についての一考察
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

本記事の目次

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ウルトラファイト雑考⑤「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

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 先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。

  1. はじめに/時期区分について
  2. 着ぐるみのバリエーション
  3. 撮影日程についての一考察
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)<本記事>

※本記事を読む前に、シリーズ④「ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴」の、特に後半部分に目を通すことを推奨します。

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これがウルトラファイトの造成地だ!

 前回の記事では、ウルトラファイト新撮編ロケ地の変遷を概観し、最大の謎といえる「造成地」の地形的特徴を確認した。

 ウルトラファイトにおける「造成地」は、すでに2003年の段階で初代仮面ライダーのロケ地として知られる通称「三栄土木」(実は正確には「大竹興業」であるらしい。前記事の追記参照)だということが知られていた*1。しかしその後の公式文献での記述は錯綜し、また前回「造成地B」として把握した一帯については諸説定まらぬ状況である。

 前記事では、「三栄土木/大竹興業」の一部としても知られる〈造成地A〉および〈造成地B〉が隣接する土地であり、ほぼ同じ場所であることを確認した。本記事では、これら造成地が正確にどこに存在したのかを改めて明らかにするとともに、その来歴と、現在における状況を取り上げよう。

※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。

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*1:「ファイト古戦場めぐり」『ウルトラマンAGE』Vol.11、2003年

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ウルトラファイト雑考④ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴

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まさか月額500円でウルトラファイトが見放題になる時が来るとは………!

 先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。

  1. はじめに/時期区分について
  2. 着ぐるみのバリエーション
  3. 撮影日程についての一考察
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴<本記事>
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

 ウルトラファイト新撮編を語る上で欠かせない要素の一つに、ロケ地というものがある。ご存知のようにウルトラファイト新撮編は低予算どころではない超低予算で制作された。当然スタジオセットなど組めるわけもなく、かといってそこらの路地裏でロケするわけにもいかず……ということで、円谷プロにほど近い造成地に着ぐるみとカメラを持ち込んでのロケ撮影が行われたのである。

 一応当初は№72のサブタイトル「大峡谷の決闘!」にあるように怪獣が巨大であるようなテイで撮影が行われたが、まあ実際巨大かどうかなんてのは些細なことであり、次第に造成地であることを隠さないようになる。さらに後には三浦半島や軽井沢、伊豆下田への遠征ロケも行われてゆく。

 本記事ではウルトラファイト新撮編におけるロケ地の変遷を追いつつ、とりわけ印象深いロケ地である「造成地」についてその地理的特徴の把握を試みる。その作業を基礎として、次回⑤では、造成地がどこに所在したのかを特定する。

※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。できれば①も読んでいただきたいですが、単独でもおそらく大丈夫です。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。

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ウルトラファイト雑考③撮影日程についての一考察

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 先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。

 本記事では、前2回の内容を元にして、ウルトラファイト新撮編がいったいいつ撮影されたのか、という大きな問題について考察します。

  1. はじめに/時期区分について
  2. 着ぐるみのバリエーション
  3. 撮影日程についての一考察<本記事>
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。できれば①も読んでいただきたいですが、単独でもおそらく大丈夫です。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。

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新撮編はいつ撮影されたのか

 ウルトラファイト新撮編はいったいいつ撮影されたのだろうか。円谷プロ研究者であれば一度は気になる疑問だと思う。この疑問については、現在もっとも信頼できるソースであるDVD-BOXブックレット*1を参照しても、今ひとつはっきりしない記述しか見つけることはできない。

 実は、その答えはとうの昔に出されていた。それは1995年発売のLD-BOX「ウルトラファイトメモリアルBOX」の付録ブックレット*2の裏表紙においてである。そこには「ウルトラファイト』撮影作業報告書再録」として、撮影部によって記録された撮影日やスタッフのデータが抜粋翻刻されているのだ。【表3-1】にその内容を整理した。

日付 本日の作業 監督 技師 スタッフ 備考
70/09/16 74話 鈴木俊継 永井仙吉 鈴木、黒田 途中で中止
70/09/17 73,74,79,72,81,75話 鈴木俊継 永井仙吉 鈴木、黒田 ※№72は真偽不明
70/09/18 82,83話 鈴木俊継 永井仙吉 鈴木、黒田 雨のため1時に中止
70/09/19   鈴木俊継 永井仙吉 鈴木、黒田 7時集合するが雨天中止
70/09/20 (撮休)        
70/09/21 75,76,78,86,85,87,84話 鈴木俊継 永井仙吉 鈴木 7-17時撮影
70/09/22 93,94,95,96話 谷清次 永井仙吉 鈴木、黒田  
70/09/23 97,98,99,100,102,104,92話 谷清次 永井仙吉 鈴木、黒田  
70/09/24 114,115,116,118,117 安藤達己 永井仙吉 鈴木、黒田 ※№115以外は真偽不明
70/09/25 105,106,110,101,112,91話 谷清次 永井仙吉 鈴木、黒田 ※№112は真偽不明
70/10/09 タイトル撮影   永井仙吉 野口、タチバナ  
70/11/10 よみうりランドロケ 鈴木俊継 永井仙吉 柿沼、黒田  
70/11/11 よみうりランドロケ 鈴木俊継 永井仙吉 柿沼、黒田  
70/11/12 剣崎海岸ロケ 鈴木俊継 永井仙吉 柿沼、黒田 帰社後タイトル撮影
70/12/15 タイトル撮影   永井仙吉 野口、佐山、熊谷  
70/12/16   谷清次 永井仙吉 熊谷、野口、関谷、須崎、飯田、佐山  
70/12/17 (撮影なし)        
70/12/18   谷清次 永井仙吉 野口、関谷、須崎、飯田、佐山  
70/12/19   谷清次 永井仙吉 野口、関谷、須崎、飯田、佐山、熊谷  
71/01/18 タイトル撮影   永井仙吉 野口、熊谷  
71/02/04 軽井沢ロケ 谷清次 野口明 佐藤貞夫  
71/02/05 軽井沢ロケ 谷清次 野口明 佐藤、黒田 天気条件悪し
71/02/06 軽井沢ロケ 谷清次 野口明 佐藤、黒田 撮影条件午後悪し
71/02/07 軽井沢ロケ 谷清次 野口明 佐藤、黒田  
71/02/23 タイトル撮影   野口明 熊谷  
71/03/09 下田ロケ 大平隆 野口明 佐藤、黒田  
71/03/10 下田ロケ 大平隆 野口明 佐藤、黒田  
71/03/11 下田ロケ 大平隆 野口明 佐藤、黒田  
71/03/12 下田ロケ 大平隆 野口明 佐藤、黒田  
71/04/02 タイトル撮影   野口明 熊谷、佐山  
71/06/04 (怪獣倉庫) 熊谷健 野口明 兵藤、岸田、佐山、石田  
*LD「ウルトラファイトメモリアルBOX」〈BELL-819、EMOTION、1995年〉所収データによる。
 撮影班の記録した「撮影作業報告書」の内容を書き起こしたデータだという。
*70年9月撮影分の話数記載は着ぐるみの異動や天候と整合しない部分があり、全般的に信憑性が怪しい
【表3-1】LD-BOXによるウルトラファイト撮影記録

 元になった資料は、記載内容などからみて『ウルトラセブン撮影日誌』*3p.23に例示される「撮影作業報告書」と考えられる。主に使用機材やフィルムの使用尺などを記録した様式である。同じく円谷プロで作成された「製作日報」に比べて情報量では劣るが、同時代的な記録として貴重な情報が多く記されている。ロケの日程はおろか、監督・カメラマン(「技師」と記載)・ 参加スタッフ*4なども丸わかりである。特に、ロケ地や撮影話数までもが記載されていることは注目に値する。

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「撮影作業報告書」の書式(『ウルトラセブン撮影日誌』p.23より引用)

 ロケ日程は次のように整理できる。

  1. 第1回撮影(70/09/16~70/09/25)
  2. 第2回撮影(70/11/10~70/11/12、ロケ地:よみうりランド*5・剣崎海岸)
  3. 第3回撮影(70/12/16~70/12/19)*6
  4. 第4回撮影(71/02/04~71/02/07、ロケ地:軽井沢)
  5. 第5回撮影(71/03/09~71/03/12、ロケ地:下田)
  6. 追加撮影(71/06/04)

 シリーズ①では、制作№がそのまま撮影順を反映したものではないことを明らかにしつつ、大まかな制作の順序として、新撮編全体がおよそ六つの期間に区分できることを示した(【表1-1】)。では、この6つの期間は、ロケ日程とどのように対応するのだろうか。前回②で詳述した着ぐるみのバリエーションや変遷を踏まえつつ、本稿ではあくまで仮説としてであるが、比定を試みたいと思う。

 ……といってもほとんど明らかなようだが、実はそう単純な話でもない。以下、順番に検討してゆく。また、判明する限りで個別話数の撮影日・撮影順についても検討したい。

*1:ウルトラファイト スーパーアルティメットBOX」〈POBE-1062/9〉ポリドール、2006年。執筆は早川優氏による。

*2:LD-BOX「ウルトラファイトメモリアルBOX」〈BELL-819〉EMOTION、1995年。解説・構成は秋廣泰生氏

*3:金田益美編著『新資料解説 ウルトラセブン撮影日誌』復刊ドットコム、2017年。残っているのならセブン以外もどうにか刊行してほしいものである。

*4:残念ながら撮影部を中心とした円谷プロ側の人名だけであり、スーツアクター等までは記載されていないようだ。

*5:後述のとおり実際は別の場所

*6:前掲『ウルトラマンAGE』Vol.11では11月16~19日とするが、作品と天候が整合しないため誤植であろう

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ウルトラファイト雑考②着ぐるみのバリエーション

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 先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。

  1. はじめに/時期区分について
  2. 着ぐるみのバリエーション<本記事>
  3. 撮影日程についての一考察
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。できれば①も読んでいただきたいですが、単独でもおそらく大丈夫です。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。

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2-1.ウルトラファイトの怪獣たち

 ウルトラファイト新撮編の楽しさといえば、やはりあの個性極まるフリーダムな怪獣たちである。元々のデザインの秀逸さに加え、山田二郎節に乗って縦横無尽にファイトを繰り広げる彼らのキャラクター性こそ、まさに「ファイト」「ファイト」たらしめるものの一つであろう。

 着ぐるみに入ったのは怪獣ショーなどで活躍していた「野武士の会」のアクターたちだったという。各地で活躍を重ね気心の知れた間柄だからこそ、半ば即興の筋書きしかないなかでも自然な(?)掛け合いや殴り合いを見せることができたわけである。

 さて「ファイト」新撮編には通算で14匹の怪獣(セブン含む)が登場した。何話に誰が登場したか、という情報は本シリーズ①の【表1-1】をご覧いただくとして、端的に情報をまとめてみたのが、次の表だ。

怪獣名 登場回数 登場期間 着ぐるみ種別 バリエーション数 備考
セブン 68 全期 アトラク 6種
ウー 50 全期 アトラク1種
エレキング 35 Ⅴ期以外 アトラク 3種
イカルス 52 全期 アトラク 2種
バルタン 10 Ⅰ-Ⅱ, Ⅵ期 アトラク 2種
テレスドン 8 Ⅰ-Ⅲ期 本編用 1種
ガッツ 7 Ⅰ-Ⅲ期 本編用 1種 くちばしが黄色に再塗装
ゴドラ 9 Ⅰ-Ⅱ期 本編用 1種 目の周りが再塗装。はさみ新造
アギラ 8 Ⅰ-Ⅱ期 本編用 1種
ケロニヤ 9 Ⅲ期 アトラク 1種 頭部は本編用
シーボーズ 21 Ⅲ-Ⅳ期 本編用 1種
ゴーロン 11 Ⅴ期 アトラク 1種
キーラー 25 Ⅴ-Ⅵ期 本編用 1種 胴体に黄色い模様を追加
ゴモラ 1 №196 アトラク 1種
【表2-1】ファイト新撮編の登場怪獣たち

 登場回数でいうと、やはり主役・セブンが新作編全125話中68話に登場し最多である。本シリーズ①で分類した六期分類でみると、最初から最後まで出ずっぱりである。続けて独特の愛嬌が印象深いイカルスと、狂乱の悪鬼ことウーさんがそれぞれ52・50話ずつ登場した。「ファイト」の顔の一人であるエレキングは35話と振るわない。軽井沢ロケ編(第Ⅴ期)での不在が響いたかたちだ。彼ら常連を除くと、キーラーやシーボーズが20話台に乗っているほかは意外に出演していない。セブンの舎弟アギラなんかは結構印象深いのだが、それでも10話も出ていないのだから驚きだ。

 顔ぶれの選び方は、とにかく「使えるものを使う」という具合だったようだ。制作担当などを務めた熊谷健氏の回想によれば、あらかじめ営業と打ち合わせをして、怪獣ショーに出払っていないものから選ばざるをえなかった。その中でも特に動きやすいものが選ばれていくうちに、「常連」のような怪獣が出てきたのだという*1。道理で常連怪獣をみると、人型に近いものが多いわけである*2

着ぐるみという謎

 そう、ファイト怪獣のキャラクター性といえば、どうしてもあの「着ぐるみ」たちに触れないわけにはいかない。造形の怪しいアトラク用と草臥れはてた本編用が泥の中で殴り合い蹴り合う、ウルトラ本編では見られないあの独特な魅力は語るに語り尽くせない。

 それぞれの着ぐるみの来歴については、DVD-BOXのブックレットや『ウルトラマンAGE』Vol.11*3、『ウルトラファイト番外地』*4コラムなどで詳しく取り上げられており、ごく簡単に上の表に情報をまとめている。アトラク用ばかりという印象があるが、なんだかんだで半数近くが本編用の流用である。ただ、そのまま使うということをしていないのが円谷流といったところだろうか。怪獣ショーなどへの出演を経たためか、色々と再塗装されたり一部が新造形だったりする。

 アトラク用にしても、いやアトラク用だからというべきか、造形が本編とかけ離れていることといったらありゃしない。なんだか顔の大きいイカルス、顔が怖いウー、妙に黄色いエレキング、はさみが丸っこいバルタンなどなど……。見慣れてくるとむしろ本編のほうに違和感を感じてしまうあたり、これがウルトラファイトの味なのである。

 そんな着ぐるみたちが入れ代わり立ち代わり、役柄を変え替え登場するのが新撮編なのだが、実は役柄どころか、着ぐるみ自体が入れ替わっていることもあるのである。具体的には、主役セブンに常連のエレキングイカルス、あとはバルタンについて、複数の着ぐるみバリエーションが確認できる。

 この着ぐるみバリエーションは撮影日程の比定上重要なヒントともなる。諸々の先行研究の情報と、筆者が今回得たいくつかの情報をとりまとめ、怪獣たちの秘められた真実に迫ってみたい。

*1:以上、「ウルトラファイト スーパーアルティメットBOX」(ポリドール、2006年〈POBE-1062/9〉)ブックレット(執筆:早川優)および「華麗なる遺書②「ウルトラシリーズ」の栄光と「ウルトラファイト」の苦悩・前編」(『ウルトラマンAGE』Vol.4、2002年)

*2:ガッツやケロニヤも人型だが、前者には頭が重く不安定という問題があり、後者は頭が別物(アトラク用に本編用)なので取れやすいという問題があったようだ

*3:田島淑樹「怪獣たちの横顔 新撮影編」『ウルトラマンAGE』Vol.11、2003年

*4:唐沢なをきウルトラファイト番外地』KADOKAWA COMICS 特撮A、2006年。コラム執筆は唐沢よしこ氏。

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ウルトラファイト雑考①はじめに/時期区分について

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 先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。

  1. はじめに/時期区分について<本記事>
  2. 着ぐるみのバリエーション
  3. 撮影日程についての一考察
  4. ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
  5. 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)

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ウルトラファイト」基礎データ
各話2分40秒(実尺)全196話
TBS系 1970.09.28~1971.09.24(全253回 ※枠内再放送含)
月曜~金曜 17時30分~17時35分

はじめに

 2020年、「ウルトラファイト」が50周年を迎えた。今更あの番組の魅力については語るまでもないだろう。1970年~71年に放送された「マン」「セブン」の特撮シーンだけを抜き出しプロレス実況風ナレーションを加えたミニ番組、言ってしまえばそれだけである。しかし、ビデオなどまだない時代、平日毎日夕方にTBSへとチャンネルを回せばウルトラが、しかもその名場面だけが流れていることの意味は、あまりにも大きかった。この結果、折からの旧作再放送で再び高まっていたウルトラ熱には更に高まり、71年4月「帰マン」の放送へ繋がったことは知られている。

 ウルトラファイトの大きな魅力の一つはなんといっても「新撮編」である。低予算での番組作りを志向した円谷プロでは既存フィルムからの再編集によって「ウルトラファイト」130本を制作する予定であった(「抜き焼き編」)。ところが過程で予定本数に不足することが判明し、急遽怪獣倉庫の着ぐるみを持ち出して撮り足すことになったのがこの「新撮編」であった。テロテロの着ぐるみとたまに首の後ろが黒いセブンによる戦いは次第にストーリー性を帯びるようになり、特に最終盤にはシュールを極めた芸術作品の如き作品も撮影された。

 放送は抜き焼き・新撮を織り交ぜて行われた。視聴率の好評が伝えられるとTBSはさらに65回の追加発注を行い、最終的には196話(うち125話が新撮)が制作されている。

 ウルトラファイトは放送後も度々再放送が行われ、特に新撮編は90年代にかけてカルト的な人気を博すようになった。そして21世紀に入りネット上でその面白さが再発見され、ネタとして特撮ファン層以外にもその存在が知られるようになったことは読者の皆さんもご存知のことと思う。また「ファイト」の便利なフォーマットは、「ミラーファイト」(1974)を始めとする数多の後継作品群を生み出した。こちらについては同人誌『ウルトラ○○○○ファイト』で詳しく紹介したとおりである。

 ところでこのウルトラファイト新撮編を振り返ってみると、その研究史の長さの一方で、意外にもわかっていないことが多いことに気づく。そもそも基礎となる放送日などにも不確かな点があり、撮影順などについてはなおさらである。この他にもスーツの差異やロケ地がどこであったかという問題については先人により考証が積み重ねられているにも関わらず、曖昧かつ断片的な情報がそのままの状態で流通しつづけている。筆者は幸いにして、今回上述の点について若干の知見を得ることができた。本稿ではそれをまとめ、ささやかながら50周年の記念としたい。


 手始めとして、本記事では分析の前提となる時期区分について取り上げる。制作ナンバー順に考えるよりは、ある程度のまとまりに区分して考えることが有効であることを示す。

 続く記事②においては、着ぐるみの変遷をその時期区分に則って整理する。記事③では、以上の議論を踏まえながら、ウルトラファイトがいつ撮影されたのかについて、話数単位での特定を試みる

 さらに、ウルトラファイト新撮編前半の最大の特徴といえる「造成地」について、記事④・記事⑤を通して、その地理的特徴の把握位置の正確な特定を行い、ロケ地の過去・現在・未来についても取り上げる。

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