ウルトラファイト - TSUBURAYA IMAGINATION
先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。
本記事では、前2回の内容を元にして、ウルトラファイト新撮編がいったいいつ撮影されたのか、という大きな問題について考察します。
- はじめに/時期区分について
- 着ぐるみのバリエーション
- 撮影日程についての一考察<本記事>
- ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴
- 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)
※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。できれば①も読んでいただきたいですが、単独でもおそらく大丈夫です。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。
新撮編はいつ撮影されたのか
ウルトラファイト新撮編はいったいいつ撮影されたのだろうか。円谷プロ研究者であれば一度は気になる疑問だと思う。この疑問については、現在もっとも信頼できるソースであるDVD-BOXブックレット*1を参照しても、今ひとつはっきりしない記述しか見つけることはできない。
実は、その答えはとうの昔に出されていた。それは1995年発売のLD-BOX「ウルトラファイトメモリアルBOX」の付録ブックレット*2の裏表紙においてである。そこには「『ウルトラファイト』撮影作業報告書再録」として、撮影部によって記録された撮影日やスタッフのデータが抜粋翻刻されているのだ。【表3-1】にその内容を整理した。
日付 |
本日の作業 |
監督 |
技師 |
スタッフ |
備考 |
70/09/16 |
水 |
74話 |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
途中で中止 |
70/09/17 |
木 |
73,74,79,72,81,75話 |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
※№72は真偽不明 |
70/09/18 |
金 |
82,83話 |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
雨のため1時に中止 |
70/09/19 |
土 |
|
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
7時集合するが雨天中止 |
70/09/20 |
日 |
(撮休) |
|
|
|
|
70/09/21 |
月 |
75,76,78,86,85,87,84話 |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
鈴木 |
7-17時撮影 |
70/09/22 |
火 |
93,94,95,96話 |
谷清次 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
|
70/09/23 |
水 |
97,98,99,100,102,104,92話 |
谷清次 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
|
70/09/24 |
木 |
114,115,116,118,117話 |
安藤達己 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
※№115以外は真偽不明 |
70/09/25 |
金 |
105,106,110,101,112,91話 |
谷清次 |
永井仙吉 |
鈴木、黒田 |
※№112は真偽不明 |
70/10/09 |
金 |
タイトル撮影 |
|
永井仙吉 |
野口、タチバナ |
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70/11/10 |
火 |
よみうりランドロケ |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
柿沼、黒田 |
|
70/11/11 |
水 |
よみうりランドロケ |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
柿沼、黒田 |
|
70/11/12 |
木 |
剣崎海岸ロケ |
鈴木俊継 |
永井仙吉 |
柿沼、黒田 |
帰社後タイトル撮影 |
70/12/15 |
火 |
タイトル撮影 |
|
永井仙吉 |
野口、佐山、熊谷 |
|
70/12/16 |
水 |
|
谷清次 |
永井仙吉 |
熊谷、野口、関谷、須崎、飯田、佐山 |
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70/12/17 |
木 |
(撮影なし) |
|
|
|
|
70/12/18 |
金 |
|
谷清次 |
永井仙吉 |
野口、関谷、須崎、飯田、佐山 |
|
70/12/19 |
土 |
|
谷清次 |
永井仙吉 |
野口、関谷、須崎、飯田、佐山、熊谷 |
|
71/01/18 |
月 |
タイトル撮影 |
|
永井仙吉 |
野口、熊谷 |
|
71/02/04 |
木 |
軽井沢ロケ |
谷清次 |
野口明 |
佐藤貞夫 |
|
71/02/05 |
金 |
軽井沢ロケ |
谷清次 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
天気条件悪し |
71/02/06 |
土 |
軽井沢ロケ |
谷清次 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
撮影条件午後悪し |
71/02/07 |
日 |
軽井沢ロケ |
谷清次 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
|
71/02/23 |
火 |
タイトル撮影 |
|
野口明 |
熊谷 |
|
71/03/09 |
火 |
下田ロケ |
大平隆 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
|
71/03/10 |
水 |
下田ロケ |
大平隆 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
|
71/03/11 |
木 |
下田ロケ |
大平隆 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
|
71/03/12 |
金 |
下田ロケ |
大平隆 |
野口明 |
佐藤、黒田 |
|
71/04/02 |
金 |
タイトル撮影 |
|
野口明 |
熊谷、佐山 |
|
71/06/04 |
金 |
(怪獣倉庫) |
熊谷健 |
野口明 |
兵藤、岸田、佐山、石田 |
|
*LD「ウルトラファイトメモリアルBOX」〈BELL-819、EMOTION、1995年〉所収データによる。
撮影班の記録した「撮影作業報告書」の内容を書き起こしたデータだという。
*70年9月撮影分の話数記載は着ぐるみの異動や天候と整合しない部分があり、全般的に信憑性が怪しい |
【表3-1】LD-BOXによるウルトラファイト撮影記録
元になった資料は、記載内容などからみて『ウルトラセブン撮影日誌』*3p.23に例示される「撮影作業報告書」と考えられる。主に使用機材やフィルムの使用尺などを記録した様式である。同じく円谷プロで作成された「製作日報」に比べて情報量では劣るが、同時代的な記録として貴重な情報が多く記されている。ロケの日程はおろか、監督・カメラマン(「技師」と記載)・ 参加スタッフ*4なども丸わかりである。特に、ロケ地や撮影話数までもが記載されていることは注目に値する。
「撮影作業報告書」の書式(『ウルトラセブン撮影日誌』p.23より引用)
ロケ日程は次のように整理できる。
- 第1回撮影(70/09/16~70/09/25)
- 第2回撮影(70/11/10~70/11/12、ロケ地:よみうりランド*5・剣崎海岸)
- 第3回撮影(70/12/16~70/12/19)*6
- 第4回撮影(71/02/04~71/02/07、ロケ地:軽井沢)
- 第5回撮影(71/03/09~71/03/12、ロケ地:下田)
- 追加撮影(71/06/04)
シリーズ①では、制作№がそのまま撮影順を反映したものではないことを明らかにしつつ、大まかな制作の順序として、新撮編全体がおよそ六つの期間に区分できることを示した(【表1-1】)。では、この6つの期間は、ロケ日程とどのように対応するのだろうか。前回②で詳述した着ぐるみのバリエーションや変遷を踏まえつつ、本稿ではあくまで仮説としてであるが、比定を試みたいと思う。
……といってもほとんど明らかなようだが、実はそう単純な話でもない。以下、順番に検討してゆく。また、判明する限りで個別話数の撮影日・撮影順についても検討したい。
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