セブンガーファイト配信開始!!!!!!!
ウルトラファイト - TSUBURAYA IMAGINATION
まさか月額500円でウルトラファイトが見放題になる時が来るとは………!
先日『ウルトラ○○○○ファイト ~後継作品全話総覧~』という同人誌を書きましたが、その際に本家「ウルトラファイト」を見返したら色々と発見があったのでまとめた記事です。本当は同人誌のコラムか何かにするつもりでしたが、分量の関係や、途中で構想が膨らんだことから、ブログ記事数本に分けて流します。
- はじめに/時期区分について
- 着ぐるみのバリエーション
- 撮影日程についての一考察
- ロケ地の変遷と「造成地」の地理的特徴<本記事>
- 「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)
ウルトラファイト新撮編を語る上で欠かせない要素の一つに、ロケ地というものがある。ご存知のようにウルトラファイト新撮編は低予算どころではない超低予算で制作された。当然スタジオセットなど組めるわけもなく、かといってそこらの路地裏でロケするわけにもいかず……ということで、円谷プロにほど近い造成地に着ぐるみとカメラを持ち込んでのロケ撮影が行われたのである。
一応当初は№72のサブタイトル「大峡谷の決闘!」にあるように怪獣が巨大であるようなテイで撮影が行われたが、まあ実際巨大かどうかなんてのは些細なことであり、次第に造成地であることを隠さないようになる。さらに後には三浦半島や軽井沢、伊豆下田への遠征ロケも行われてゆく。
本記事ではウルトラファイト新撮編におけるロケ地の変遷を追いつつ、とりわけ印象深いロケ地である「造成地」についてその地理的特徴の把握を試みる。その作業を基礎として、次回⑤では、造成地がどこに所在したのかを特定する。
※本記事ではシリーズ①の【表1-1】の内容を特に説明なく参照します。できれば①も読んでいただきたいですが、単独でもおそらく大丈夫です。
右に出てくるサムネをクリックすることで、【表1-1】を見ることができます。
4-1.ウルトラファイト新撮編ロケ地の変遷
まずは、ウルトラファイト新撮編に登場したロケ地を一つずつ紹介しながら、それがどこに所在するのかを考えたい。
ウルトラファイト新撮編におけるロケ地研究では、例えば作品全般に関するまとまった公式文献である『ウルトラマンAGE』Vol.11*1があるほか、ファンサイトでは、tsuzuki氏によるWEBサイト「ウルトラシリーズロケ地探訪」が非常に詳しい。本節では、以上の先行研究における成果に深く依拠しつつ、筆者の僅かながらの考察を付け加える。
4-1-1.造成地A(第Ⅰ期~第Ⅳ期)
登場:№72~81、84~127、135、138、139、143、148、150(60回)
ウルトラファイトのロケ地といえば、ここ以外にはないだろう。新撮編前半にあたる第Ⅰ期から第Ⅲ期(№72~130、≒第1回撮影~第2回撮影)において登場した造成地は、すべて同じ場所と考えられる。第Ⅳ期(№131~150、≒第3回撮影)では別の造成地が登場するが、やはり主要な舞台として登場している。
なによりも大きな特徴は、怪獣たちの背後に高くそびえる巨大な崖であろう。どの話数でも基本的にこの崖が映り込むことから、同じ造成地内でロケーションを少しずつ変えながら撮影が行われたことがわかる。しかしそれでも人間は楽をしたがるものであり、新撮編の中でいくつかの「定番」撮影ポイントが生まれてくる。
それではこの造成地(後に登場する別の造成地と区別するため、「造成地A」と呼称する)がどこにあるのかというと、「ウルトラシリーズロケ地探訪」には未掲載であり、公式のいくつかの文献でも記述が食い違っている。
というわけで、造成地Aについては4-2以降で詳しい地形的特徴や、実際にそれがどこなのかという問題を取り上げたい。
4-1-2.土の黒い荒野(第Ⅰ期)
登場:№82、83(2回)
基本的に同じ造成地で撮影された第Ⅰ期であるが、実は2話だけ、明らかに違うロケーションで撮影された回が存在する。それは№82「宿命のライバル!」・№83「嵐を呼ぶ血戦場」のことである。まずは次の画像を御覧いただきたい。
両話ともに同じロケーションであること、そして土質が真っ黒であり、雨が降る悪天であることを差し引いても、造成地Aの褐色土とは明らかに異なることがわかると思う。さらに周囲の状況に目を向けると、造成地Aの最大の特徴である巨崖はどこにも存在しない。近くには等間隔に並んだ木立があり遠景には山並みが見える。造成地Aの近所というわけでもなく、全く違う土地なのである。
ただ残念ながら、この荒野がどこに所在するかについては、現在のところ有力な情報を得られていない。そもそも先行研究においてもこの荒野が造成地と異なる場所であることに触れたものはないのである。
ただ撮影時期は1970年9月の第1回撮影と思われることから、円谷プロからさほど遠方ではないはずだ。さらに火山灰土と思われる黒色土であることを加味すれば、ある程度場所は絞り込めるのではないだろうか。今後、同時期の作品等もあわせて検討してゆきたい。
4-1-3.三浦半島(第Ⅲ期・第Ⅳ期)
ウルトラファイト新撮編の遠征ロケといえば、後述する軽井沢ロケや下田ロケが有名である。それらに先立ち、第Ⅲ期・第Ⅳ期では2回の三浦半島ロケが行われている。なお、それぞれについては着ぐるみの相違から、全く別日程であることをすでに明らかにしたところである。さらに言えば、ロケ地も異なる場所である。
剱崎海岸
登場:№128・129(2回)
第Ⅲ期のうち№128・129が三浦半島でのロケ回である。両話ではともに海に突き出た海蝕の進んだ岩場の上で怪獣たちが取っ組み合っている。
この岩場がどこに所在するのかについては、いくつかの情報がある。LD-BOXブックレット*2所収の撮影作業報告書再録では第2回撮影のうち11月12日のみ「剱崎」でロケが行われたことが記録されている。また前掲『ウルトラマンAGE』Vol.11でも両話について剱崎ロケとしている。すなわち、三浦半島南端にある「剱崎海岸」である。
この情報の検証として、次の2枚のカットを挙げよう。地層や対岸の地形が、Googleストリートビューで見えるものと一致している。このほか『特撮秘宝』Vol.6*3に掲載された剱崎ロケ時とされるスナップの地形も現地と一致していることから、ここで間違いないのではないかと思われる。昨今の事情から実踏していないが、いずれ探訪したい。
荒崎海岸
登場:№144~146(3回)
第Ⅳ期のうち№144~146の3話も三浦半島のロケである。エレキングが洞窟から出てきたり、セブンらと海の中で戦うシーンがあった。着ぐるみの特徴などから、1970年12月のロケと推定される(前記事参照)。
この時のロケ地については「ウルトラシリーズロケ地探訪」さんが既に完全に特定されており、三浦半島西岸の荒崎海岸であることがわかっている。具体的には「夕日の丘」から下ったあたりの岩場、特に「十文字洞」の付近であるという。
4-1-4.造成地B(第Ⅳ期)
登場:№131~134、136、137、140~142(11回)
新撮編も当初予定話数を過ぎた第Ⅳ期から、造成地に異変が起こる。これまでの造成地とは明らかに違う場所が登場するようになるのだ。このロケ地群を「造成地B」と呼称する。
特徴は、やはり土質の違いである。造成地Aの褐色と異なる黄色がかった砂っぽい地面で判別できる。さらに、周囲には木立や藪が見て取れ、造成地Aにおいて巨崖が常に背景にあったことを考えれば、異なるロケーションであることがわかるだろう。
この「造成地B」がどこであったか・造成地Aとの位置関係はどうか、という問題は、実は造成地全体の位置特定につながる。というわけで、やはりこちらについても詳しくは4-2以降で取り上げてゆく。
4-1-5.軽井沢(第Ⅴ期)
登場:№151~170(20回)
新撮編も終盤に入ってきたころ、ファイトの戦場に激変が訪れる。初の長期遠征ロケ!!しかも軽井沢!! 第Ⅴ期と分類した№151~170は、軽井沢における1971年2月の第4回撮影で撮影された。
初回にあたる№151「熱い子守唄」は、厳密には軽井沢ではなく、碓氷峠の群馬側にある碓氷第三橋梁で撮影されたことが「ウルトラシリーズロケ地探訪」さんによって明らかにされている。なぜかこの回だけセブンが黒首であるが、ロケの初日に立ち寄って撮影されたものだろう。
その後の19話は軽井沢の数カ所でロケ撮影が行われた。監督の谷清次氏は学生時代に軽井沢に別荘を借りたことがあり土地勘があったといい、移動しては同じ場所でアングルを変えて数話を撮影したという*4。具体的な場所については先行研究では明らかにされていない。
ヒントとなるのは、多くの話数で背景に写り込んでいる浅間山である。ロケ地は数ヶ所に及ぶが、浅間山の角度を手がかりにすると、大まかな地域を絞り込むことができる。
まず第一に以下に挙げたいくつかのカット。頻出する巨大な崖や草原などのロケーションから見える浅間山をよく見ると、左側に尖ったピークがあり、右側に下ったところに丸っこい小山があることがわかる。それぞれ、「剣ヶ峰」および「小浅間山」と形が一致する。
さらに、次のカット。雪の中でのファイトが描かれた数話に映る浅間山には、剣ヶ峰などのピークはなく、連なる篭ノ登山なども見えない。代わりに手前側のえぐれた斜面と稜線が印象に残る。
では、このアングルに一致するのはどこなのだろうか。簡易に国土地理院の3D地図を利用して検証すると、それぞれ浅間山頂から見て南東、東北東の方角と考えられる。
浅間山の写り方や周囲の状況を加味すれば、ロケ地の候補は次の地図の3つの丸のあたりとなる。
※2022追記:軽井沢編のロケ地を特定しました。詳しくは以下の記事にて。
4-1-6.下田(第Ⅵ期)
登場:№171~195(25回)
ファイト新撮編最終盤、軽井沢に続く遠征ロケの行き先は伊豆・下田! チョイスが本当にセンスある。下田を訪れたのは1971年3月の第5回撮影。まだ海は肌寒い頃であろうか。
実は下田ロケについてもやはり「ウルトラシリーズロケ地探訪」さんが1話を除いて具体的なロケ場所を特定されており、白浜海岸・吉佐美大浜・入田浜・逢ヶ浜*5の4ヶ所の海岸で行われたことがわかっている。
先行研究によって解決されているのでもう書くことがないが、ただ№175「怨念!小島の春」については定説がない。状況証拠から明らかに下田での撮影である一方、ヒントとなる特徴的な地形が一切映らないのである。植生を見る限りでは逢ヶ浜が近く、地形的には吉佐美大浜の陸側に似ているが、残念ながら今回の検討でも仮説すら立てることができなかった。ただ、同話で燃やされた三度笠は熊谷健氏の回想*6によれば入った食堂の壁に飾ってあったものを譲ってもらったのだという。昼食時のことだとして、前回議論したところによれば逢ヶ浜のロケは午前中であるから、吉佐美大浜ロケ説に分があると言えるだろうか。
4-2.ウルトラファイト造成地研究の現状
以上では、ウルトラファイト新撮編におけるロケ地の変遷をまとめた。様々な先行研究によって考察が積み重ねられている一方、第Ⅰ期から第Ⅳ期まで大半の話数が撮影された造成地については、残念ながら公式の諸文献でも記述が錯綜している。
DVD-BOXブックレットでは「生田近辺の造成地」とし、『円谷プロ画報』*7では「多摩丘陵、よみうりランド」とする。具体的な場所どころか、一箇所であるのかもわからない。実は両者から遡る前掲『ウルトラマンAGE』Vol.11で語られている、
東京都稲城市の京王線「よみうりランド」駅近くにある崖地。翌1971年放映の「仮面ライダー」の〈いつもの戦いの場所〉としても有名になったところである
というのが結論からいえば正解なのだが、後続するムックでお茶を濁してしまっているのはいただけない。なお同書では№136「闇からのメロディー」に映るよみうりランドの仏塔を取り上げて「その近辺でも撮影が行われた」と、別の場所で撮影が行われたように書いているが、結論としてこれは誤りである。
さて、次の記事の結論をもう述べてしまおう。造成地Aと造成地B(「闇からのメロディー」もここ)は、ひと繋がりのほぼ同じ場所である。さらにそれは、生田などではなく東京都稲城市矢野口の、ファンにより「三栄土木」と通称される造成地である。
というわけで、以下ではそもそも「三栄土木」であるとする考証は正しいのか、という点まで立ち返り、造成地の地形的特徴を確認する。そして次の記事にかけて、造成地の位置を実証的に特定する。
(2021.03.20追記)……とドヤ顔で書いていたところ、ライダーロケ地研究の大先達、ロケ地大画報さんから次のような指摘をいただいた。
この崖部分は土砂採取ではなく京王線敷設に伴う造成で三栄土木ではなく大竹興業という業者が施行しており生田のスタッフも「大竹興業」として三栄〜と区別していた。最後の画像(ライダー10話)はここではなく大丸の下水処理場傍。 https://t.co/LAtNCs3lcv
— ロケ地大画報 (@yartsensei) 2021年3月20日
エビデンスがこれ、33話台本より。書き込みに三栄と書かれた字が消され大竹興業とある。場所を区別していた事が読み取れる。 pic.twitter.com/JglM8MukO3
— ロケ地大画報 (@yartsensei) 2021年3月20日
助監督の書き込み台本によれば、三栄土木とは区別して大竹興行と呼ばれる場所だったのだそうだ。さすがロケ地大画報さん、恐ろしいほどの情報源……!
というわけで、論旨に変わりはありませんが、以下「三栄土木」は「大竹興行」と読み替えて下さると幸いです。その他詳しいことは次の記事で。
(追記ここまで)
4-3.「造成地A」の地形
第Ⅰ期から第Ⅲ期までの造成地は、全て同じ場所であると思われる。いずれの作品においても、高度差20~30m程度とみられる同一の巨大な崖を背景とし、その麓の凹凸の激しい造成地で戦いが繰り広げられている。この巨崖の全景がわかるのが、次の【図1】である。№73「セブンは見た エレキングの最後!」冒頭でのパンをパノラマ合成した。むき出しとなった崖があり、その上部に木々が生えている。
特徴的なのは、【図1】の中央付近に見える高まりである。ここから鋭い一本の稜線がこちら側に伸びており、また中腹あたりには白い一本筋の地層が確認できる。この高まりや一本筋の白い地層は多くの話数で背景の巨崖に見受けられ、全てが同じものであることは明らかだろう。また、【図1】では白飛びしているが、高まりの右側上部には5本の木が目立つ形で生えており、これも判別のヒントとなる。
この巨崖の反対側には何があるのだろうか。№77「セブン必殺の荒技!」でガッツが投げられるシーンから作成した合成画像が【図2】である。反対側には崖などは何もなく、よく開けていることがわかる。【図3】は№113「墓場からの使者」でケロニヤにシーボーズが投げられたカットで一瞬映る崖の反対側であるが、やはり開けた地形となっており、民家が立ち並んでいる様子がみえる。また巨崖の両端は次第に低くなっているようであり、この造成地は平野の中の丘を開削したものであると結論づけられよう。
せっかくなので、作品に頻出する特徴的な場所をいくつか挙げておこう。位置の基準として前述の巨崖の高まりを「中央」として用いる。なお、以下の名称は全て筆者による仮称である。
※各地点の登場話数については、右のサムネから【図1-1】を参照してください
①中央付近平地
最頻出の地点であり、第Ⅱ期に属するほとんどの作品がここで撮影されている。位置関係がわかりやすい話数として№109「忍法宇宙しばり」を挙げておこう。ゴドラとセブンが戦わんとする【図4】が中央付近平地の典型的な風景であり、奥に巨崖中央の高まりが見え、手前側には2~3メートル程度の低い土の段差がみえる。
おそらくは【図1】の撮影地点もこの中央付近平地と思われる。位置関係としては、中央からやや左側となる。段差の下側が造成地では数少ない広い平地となっていることからよく使用された。
周囲の頻出する地形としては、【図4】でいうセブンの背後方向には同話でセブンやアギラが歩いてきた通路があり、アギラの背後側にはいくつかゴロっとした黒い岩が転がっている。
話数によっては土の段差を上がったあたりと思われる巨崖寄りのロケーションが使用されることもあり、そちらは地面の起伏が非常に激しいことが特徴となる。また、右に少し行ったあたりに丸っこいシルエットの木が位置しており、№84「それはバルタンの罠だ!」ほか数話に登場する。
②灌木の付近
第Ⅰ期初期の話数(№74~76、80)や第Ⅲ期の一部話数(№123・124・126)で使用された場所で、次の画像のように根の引っこ抜けた灌木が放置されている近辺である。位置としては中央の高まりよりは左側である。灌木は№109「忍法宇宙しばり」のゴドラ登場カットでも写り込んでおり、中央付近低地のからさらに左上方へ行ったあたりではないかと思われる
③硫黄沼
№81「硫黄沼世紀の対戦!」で名高い、造成地内にある沼……というか水たまりである。同話に限らずたまに同じ沼らしきものが登場しており、水面から少し上ったところの平地か、右側にある泥地がファイトに用いられている。中央付近平地で撮影された№77「セブン必殺の荒技!」で下のほうに硫黄沼らしきものが見切れていること、また№105「戦いつきず日は暮れて」で映り込む巨崖中央の高まりから考えて、中央付近平地から二段ほど下がったあたりに存在しているものと思われる。
④大峡谷
№72「大峡谷の決闘!」で印象深い、大人一人怪獣一匹がすっかり入れるほどの溝。第Ⅰ期・第Ⅱ期ではほとんど他に使われていないが、第Ⅲ期では同じところと思しき深い溝が再び何度か使用されている。№121「暴れん坊は無宿者」でセブンの背後に見える巨崖中央の高まりとの位置関係から、大峡谷は巨崖中央の右側に位置していることがわかる。
4-4.「造成地B」の地形
第Ⅳ期になり、明らかに景観の異なる造成地が登場する。これを造成地Bと仮称する。造成地Aとの違いは、まず第一に土が白~黄色がかった砂っぽいものへと変わっている点がある。第二に、造成地Aのように丘を開削した地形というよりは、藪を切り開いて掘り下げたような地形である点。造成地Aと比べると、同高度~やや上あたりに多くの木々が写っていることが認められる。
さらには、ごく近い場所に民家らしきものが見切れることもあり、より人間の生息域に近い場所で怪獣たちが戦っていたこともわかる。
この〈造成地B〉は、以下の典型的な2つの景観に分類できる。
⑤砂の盆地
№140「栄光なき野郎ども」の次のカットに典型的なように、砂っぽい斜面が特徴的な盆地状の場所である。斜面の向こう側にみえるまばらな松は元々生えていたものだろうか。同様の特徴を持つ場所は№132「怪獣極道」以降第三期では頻出であり、造成地Bを最も特徴づけるものといえる。
盆地を進んだところは№132「怪獣極道」からの1枚目に見えるようにどん詰まりとなっており、砂の斜面の反対側は№134「宇宙陰陽の構え」からの2枚目のように、雑木の生い茂る藪となっている。
⑥造成地B入口
もう一つ造成地Bに分類すべきであろうものが、№131「怪獣ゲバゲバ地帯」などに見える、次の場所である。⑤砂の盆地と同様の砂の段差を背景とした、地面の起伏が激しい地点である。後に述べるように恐らく造成地Bへの入り口部分にあたる場所である。
こちらは⑤に比べればかなり造成地然とした地形であり、セブンが転落するようなクレバスも見受けられる。この場所はほかに№137「イカルスはパンチがお好き」などに登場する。
造成地A・Bの位置関係
以上、造成地AとBの地形的特徴を確認した。それでは、両者の位置関係はどのようなものなのだろうか。
答えはごく簡単で、造成地AとBは隣接している。造成地B・⑤砂の盆地から撮影された№141「星空に殺意がひらめくとき…」からのカットで明白だろう。
同じく砂の盆地からの撮影である№136「闇からのメロディー」では巨崖中央の高まりも写り込んでいる。*8すなわち、造成地Aの左端から⑥造成地B入口を経たところにあるのが⑤砂の盆地といえる。
ちなみに、造成地AとBの中間あたりには興味深いものが存在する。№136「闇からのメロディー」からの2カットを御覧いただきたい。あっ、民家だ。ごく近いところに片屋根の民家か小屋のようなものがあり、その奥の細長い斜面にもなにか構造物が存在するようにみえる。おそらくは墓場であろう。ファイトのゲバゲバさにふさわしい殺伐とした舞台だと思うかは人それぞれであろうが、後の位置特定にも関わるため特筆しておきたい。
これがウルトラファイトの造成地だ!!
以上概観したウルトラファイトにおける造成地A・Bの概況をイラストにまとめてみた。イメージを優先し地理的正確性を必ずしも重んじてはいないが、大まかな位置関係の把握に役立てていただきたい。
4-5.初代「仮面ライダー」における造成地A
ところで、『ウルトラマンAGE』Vol.11では「仮面ライダー」の〈いつもの戦いの場所〉としても有名になった
と述べていた。ついでながら、このことについても検証しておきたい。
さしあたり、手元にあった録画の中から39話「怪人狼男の殺人大パーティー」までをチェックしたところ、4、6、8、13、24、31、33、35、36話に造成地Aが登場していることを確認できた。
以下、簡単に初代ライダーにおける主要な造成地Aの登場箇所を取り上げてみよう。
初の登場は4話「人喰いサラセニアン」で、戦闘の遠景として造成地Aの巨崖が映る。6話「死神カメレオン」では本郷がトラックに挟み撃ちにされるシーンが造成地Aである。
本格的に登場したのは8話「怪異!蜂女」である。クライマックスでの蜂女や手下の戦闘員との戦いが造成地Aで行われ、例えば次に挙げる数カットなどは、先に取り上げた巨崖中央付近がまるっきり写り込んでいる。位置としては中央付近平地上部のガレ場あたりだろうか。
同じあたりは次に示す旧1号編クライマックスの13話「トカゲロンと怪人大軍団」でも決戦地になっている。同じところで切り返した2枚目の奥に映るのは造成地Bの砂の盆地だろうか。
一文字編では24話「猛毒怪人キノコモルグの出撃!」でキノコモルグが子どもたちをトラックに詰め込んで以降のくだりが造成地Aである。ただし、ファイトで登場したあたりからは、巨崖に向かって右側に離れたところである。その後、31話「死斗!ありくい魔人アリガバリ」ではファイトに登場したあたりが決戦地となっている。次のカットに写り込んでいるのは、何を隠そう硫黄沼と思われる。
さらに35話「殺人女王蟻アリキメデス」36話「いきかえったミイラ怪人エジプタス」でも中央付近平地上部あたりが決戦地となっていることが確認できた。
小括
以上により、初代ライダーに登場した造成地と、ウルトラファイトに登場した造成地が同一地点であることが確認できた。初代ライダーのロケ地研究ではこの付近を、造成していた業者の名前を取って三栄土木と通称している*9。この名前で有名なのは巨崖の右端付近であるが、造成地Aも「三栄土木」の一部とみなされてきたことは間違いない。
※ここにあった画像は場所が違うというご指摘により消しました
三栄土木の立地についてはとうの昔に明らかにされているため、ウルトラファイトの造成地Aがどこか、という疑問にはほぼ結論が出てしまった。だがその一方で、ひと繋がりの場所だとはいっても、造成地Bが正確にどこにあるのかについては、初代仮面ライダーからヒントを得ることはできなかった。
やはり、ウルトラファイト本編に立ち返って考えるべきだろう。そういうわけで、ウルトラファイトの中に残されたヒントから、造成地の位置を特定してみたいと思う。実はその結果、造成地BどころかAについても、十メートル単位でロケ地を特定することに成功したのだが、それについては次回。
次回予告
ウルトラファイトの造成地は、すべて同じ場所だった。しかもそこは仮面ライダーの有名造成地と同一地点でもあった!?
さらに深堀りされる造成地の謎。仏塔とジャンブ台の指し示すポイントにあるものは。そして話は、稲城市の過去・現在・未来へとつながってゆく……。
次回、最終回「「造成地」はどこなのか(あるいは、だったのか)」に、ご期待ください。
「ウルトラファイト雑考」総目次
*1:「ファイト古戦場めぐり」『ウルトラマンAGE』Vol.11、2003年
*2:LD-BOX「ウルトラファイトメモリアルBOX」〈BELL-819〉EMOTION、1995年
*3:「ウルトラファイト座談会」『特撮秘宝』Vol.6(洋泉社、2017年)p.213
*4:前掲DVD-BOXブックレット
*5:文献によっては「弓ヶ浜」と記載されているが、隣接する(というよりほぼ同じ場所の)逢ヶ浜と混同したものと思われる
*6:前掲DVD-BOXブックレット
*7:『円谷プロ画報』第1巻(竹書房、2013年)p.211
*8:このほか、造成地B入り口から撮影された№131「怪獣ゲバゲバ地帯」でも巨崖が一瞬映る
*9:本節の内容は、仮面ライダー・ウルトラシリーズロケ地研究の先達の各サイトを参考にさせていただいた(仮面ライダーロケ地大画報: 三栄土木(矢野口側)・仮面ライダー激闘の地~稲城市百村周辺造成地跡 : HEROES☆CAFE・旧・三栄土木 - 光跡)